孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 ふむ。もしかすると社長の発言は気心知れた人にしかわからないジョークだったのかもしれない。そして冴島部長にはそれが伝わった。

 いつの間にか管理部の島で役職席の男性と話している社長秘書を見やる。

 深水さんとの不思議な関係性とはまた別の信頼関係が、穂高社長と冴島部長との間にはあるのかもしれない。

 そんなふうなやり取りをほかの社員ともしている穂高壱弥はとても忙しそうだ。

 ひとり手持無沙汰になり四十人弱の社員たちが働いている活気のあるフロアを眺めていると、傍らで低い声が落ちた。

「この世の中は、平等じゃない」

 気がつけば隣に穂高社長が立っていた。私の視線を引き取るようにフロアを眺めて、静かに口にする。

「巨大な力を持つ人間が自分たちの都合のいいように世界を回している。力を持たない弱い者は、手を取り合って大波に飲み込まれないように、沈まないように、もがくしかない」

 まるで自分に言い聞かせるようにまっすぐな目線だった。横から見上げているだけでも、その瞳の強さに引き込まれそうになる。

 感じられるのは強い信念だ。

 ホダカ・ホールディングスは中小規模の食品メーカーを次々に買収している。そうして弱みを補い合い、強みを伸ばし、グループ全体での成長を目指している。

「それが、俺のやり方だったはずなんだがな」
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