狼とわたあめ
私たちはわたあめの屋台を素通りして神社の境内に移動し、特設で置いてある竹づくりのベンチへ腰掛けたこ焼きを食べ始めた。
「あ、私飲み物買ってくるよ。食べてていいから」
亜美は急に立ち上がり、半分食べたたこ焼きをベンチの上に置いたかと思うとすぐに行ってしまった。
え・・・なんか申し訳ないな。飲み物売ってるとこ、確か遠いのに。
でも座るところが無くなるのも困るし・・・、あとでちゃんとお礼言おう。
私はゆっくりとたこ焼きを味わいながら、賑わう屋台通りをぼーっと眺めていた。
会いたくなければ来なければいいものを、結局来てしまった。
一番手前に見えるのはわたあめの屋台。
少し視力が悪いためぼんやりと見える横顔。
自然と、あの人と出会った日のことを思い出していた。