フォーチュンクッキー
「先に謝っておくよ、ごめんね?」

 眉尻を下げて申し訳なさそうにするこのおっきな人は、体に比例するくらいの両手を合わせる。


 なんのこと?


 話がぜんぜん見えてこないあたしに、奥から作られたカフェオレを両手にした太一さんがやってきた。


「ったく、先に言うなよ」

 ジロリと隣のおっきなひとに睨みをきかせると、小さな音を立ててあたしの前と一つ空いた右隣においてくれた。

これは多分、杏ちゃんの。


 さっきのこともあったけど、喉がカラカラなのを思い出して飛びつくようにカフェオレのストローをくわえた。

喉にあの独特の甘さを流し込むと、ちょっとだけ困った顔の太一さんが身をかがめてきた。


「チビ助、話あんだけど」


 心臓にドキリとさせる暇もないくらい、真剣な目だった。


からんとグラスの中で氷が溶けて、外からかすかに水の流れる音がした。


雨が降ってきてしまったんだろうか?


 あーあ、傘もってきてないよ。


緊張のあまり、全然関係ないことを考えていたあたし。


 重たい口を太一さんがゆっくり開く。


「1ヶ月、“先生”できなくなるかもしれないんだ」


 カフェオレをずっとストローでかき混ぜていた手がピタリと止まってしまった。


怖くて、顔を上げられない。

さっき言っていた、あたしが困った理由なのかも。
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