フォーチュンクッキー
 どうしてマスターになったのかとか、昔の太一さんのこととか聞きたいことは山ほどあったけど。

あの独特のにっこりスマイルをみると、なんにもいえなくなっちゃうんだよね。


だから、コクンと頷くしかなくって。



「がんばれよ、未来」




 そんな風に太一さんに言われたら……。


 ねえ?

……がんばるしか、ないじゃん?





 太一さんの言葉があったから、あたしはがんばっていられたんだ。


 頭の中で、呼んでくれたあたしの名前が何度もリフレインされては、とろけかける顔に力を入れる。



 休みの日でも身につけた制服の裾を、無意識に握りしめてた。

あたしたちは怜さんたちのチームベンチの後ろにいて、独特の応援を間近に聞いていた。


 そこにすっと通り越すように現れた女の人が声をかけた。

その人は、見覚えがあった。


「怜と太一はどう?」


 この高校の制服を身にまとっていて、ちょうどその人の顔が少し陰ったからよくわかる。



 …あたしが見てしまった、薄暗いオレンジ色の光景。


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