フォーチュンクッキー
 キュッっていうバッシュが床を蹴る音と、ボールが弾む重い音。

 仲間を呼び合ったり、励ましあったりする声。



 それが見てるほうにも心臓を叩くみたいに響いてくる。



 試合の展開はまだ前半の残り10分で、点数としてはかなり接戦。


余計にそれが見ている人たちにも興奮を煽るようだ。




 この1ヶ月、ほとんど太一さんには会えなかった。



 代わりと言ってはなんだけど、あたしの先生はマスターだった。

あの時、交換条件みたいに太一さんに持ちかけたものの、きちんと考えておいてくれたあたしの勉強。



「チビ助はきちんと勉強できるから」


 紹介してくれたのはその隣にいたマスターだった。

 不思議そうなあたしに安心をくれるかのように優しい笑顔をくれた。


 やっぱり予想通り外はすでにカラッと晴れていて、すこしじめついた空気が店内にも入り込んでしまっていた。

それをも吹き飛ばすような笑顔ってあるんだ。



「これでもオレの先生だったからさ」


 太一さんの言葉を合図にするかのように、マスターはいつものにっこりスマイル。

手には白い小さなカップを、綺麗な布で拭いていた。



「僕、中学校の先生やってたんだ」



 ………へ?



 突然の告白にビックリして、事情を飲み込むのに時間がかかった。

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