フォーチュンクッキー
 なんにも聞けないまま、翌日を迎えた。

夏休みだというのに制服で、あたしは喫茶店に向かう。





 昨日の宿題なんて、ただ広げただけであたしと太一さんはずっと黙ってた。


 どこからか帰ってきたマスターは目をまん丸にして驚いてた。

だけどあたしにはどうすることもできなくて、すぐに家に帰った。


 家を出る前に書いたメモがやけに虚しく感じた。



 正直いって、もう全部が嫌になりそう。


 あたしはお父さんがいないことをいいことに、かばんを放り投げて一日中布団に埋もれて泣いた。


 握り締めたシーツはしわを寄せるばっかり。

顔をうずめているところは次第に湿っていく。


 人を好きになるって、こんなにパワーがいるんだ。


 がんばろうって思ってた。

でも頭をぐるぐると回るのは、すこし落ち着いた太一さんの言葉。




『オレは…ただの“先生”だよ』



 声も出せずに、ひたすら涙が流れた。


 前にこうして思い切り泣いたのは、お母さんのところに行ったとき。


あのときも、太一さんのことだった。

< 191 / 506 >

この作品をシェア

pagetop