フォーチュンクッキー
 元気よく頷いたチビ助をあまり見ないように背中越しに合図する。

「…後ろ、乗って」


 嬉しそうにオレにしがみつく小さな手は、不覚にも胸を弾ませた。

チビ助のかばんをカゴに放り込むと、ペダルを踏みなおし一気に体重をかけて発進させた。


「た、太一さん、早い~っ」


 あせる声が腰に回る手に力をいれさせる。

悔しいから、もっと漕いでその距離を縮める。


「きゃあ~っ」

 騒いでる割には怖がってないのがわかってる。

 熱くなった顔も前を見ているから、チビ助に見られないことをイイコトに、ひたすらペダルを漕いだ。




 今日はチビ助のおじさんの手術日だった。

 別にオレが行ったってなんにもできないけど、急ぐだろうチビ助の足くらいにはなれる。


 自転車を飛ばして三十分。

目的の病院に到着すると、駐車場の隅っこに自転車をたてかける。


 入院患者への見舞いは裏口かららしく、守衛室の前の名簿に記入してから入館する。

規則どおり、すでに慣れたチビ助にならう。


 どうやらチビ助は守衛さんにえらく気に入られたようで、「こんにちは」と仲が良さそうに挨拶していた。


 本当に不思議なやつだ。




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