フォーチュンクッキー
 後に続いて一週間後に訪れた、満開の桜が咲くこの日。

あたしたちは三年間過ごした学び舎を卒業する。


 ガヤガヤとざわめく体育館に、周囲は緊張と期待が溢れる。

でも、あたしはこっそり覗いた父兄席に落ち込んでいた。


「こないなぁ…」

 お父さんはニコニコと笑ってパイプ椅子に腰掛けていたのは見えた。

でも、出発は次の日だから行く、と強く言ってていた太一さんの姿がどこにもなかった。


 もう少し待って……と、あたしの想いを汲んでくれるはずもなく、ついに始まってしまった卒業式。


 卒業証書の授与は、クラス代表が壇上に上り、クラス分まとめて卒業証書をもらってくる。

背筋を正して校長先生と向かい合う代表の姿は、寂しさよりも達成感のほうが強かった。


 そんなあたしたちのクラス代表は杏ちゃんだ。

凛とした横顔は、一生懸命勉強してきたその努力を滲ませるよう。


「片瀬未来」

「はい」

 福原先生に呼ばれて、あたしは館内に声を響かせて腰を上げた。

次々と名前を呼ばれるたびに、クラスメイトたちはそれに倣ってクラス全員が立ち上がる。


 本当に、最後の儀式みたいだった。




 ひと通り式も終わり、退場するときに名残惜しく父兄席を確認した。


 相変わらず嬉しそうに手を叩くお父さん。

それに、壁に寄りかかって拍手を送ってくれたサトさんは見えた。



 ……やっぱり、太一さんの姿だけは見つけられなかった。



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