フォーチュンクッキー
 数少ない、大好きな声で呼ばれる『名前』。


 光が差したようにぱあっと顔をあげると、人ごみの中、校門の向こうで遠目からわかるくらい肩を上下に揺らす姿。

膝で体重を支えるように腕を伸ばし、はぁはぁと荒い息を散りばめていた。


「た、太一さん…っ」

 慌てて駆け寄ると、太一さんは熱い息を切らせて苦しそうにしていた。

寂しくて、嬉しくて……抱きつきたくなる衝動を何とか抑える。


 言いたいことが山ほどある。


 来てくれなかった───とは思わない。

こうして駆けつけてくれただけで、本当に嬉しかったから。


だけど、あたしの歓喜の声とは裏腹に、太一さんはさらにぎゅっと表情を苦しそうに歪めていた。




「…悪い、……あと30分しかない」




 なんのこと?

そんな疑問を口にする暇もなく、変わらず息も絶え絶えなその腕の中に、すっぽりと閉じ込められてしまった。





「母さんの手違いで、……─今日発つことになった」



 ……───え?


トクトクと、この耳にはしっかりと太一さんの鼓動が聞こえる。


けれど、その言葉の意味を理解するには時間が足りなさ過ぎた。

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