最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
11
「どんな女性だったのでしょう」
ナーディアは、ぽつりと呟いていた。さあな、とオルランドが首をかしげる。
「さすがの俺も、そこまでは知らん。……ただ、珍しいエメラルドグリーンの瞳をした女性だった、と漏れ聞いたことはある」
「エメラルドグリーン!?」
ナーディアは、身を乗り出していた。真っ先に浮かんだのは、ジャンニのことだった。
「バローネ伯爵と、そのエメリアという女性の間には、男の子がおりませんでしたか? 私より、二、三歳上くらいの」
エメリアこそ、ジャンニの母親ではないかと思ったのだ。するとオルランドは、あっさり頷いた。
「確かに、いたな。母親と共に追放されたが……。ん、もしや、それがお前の言っていた、初恋の少年か? 異国へ移住した、と言っていたじゃないか」
「初恋ではありませんが……、そうです」
ナーディアは、渋々認めた。
「あの時は、隠していて失礼しました。クーデターの関係者だと申したら、あなたがお気を悪くされるかと思ったのです」
「昔のことだ。そこまで、気を遣わんでいい。……しかしまあ、それでは再会は望めんな」
そうですね、とナーディアは嘆息した。同時に、納得できた気がする。ロベルトが、ジャンニの話題をことさらに嫌ったのは、単に謀反人一族だったからではない。愛した女性と、その息子を処分しなければいけなかったことが、辛くてたまらなかったのだろう……。
そこへ、マリーノが帰って来た。何やら、焦った顔をしている。
「ナーディア、少しいいだろうか。店の外で、お前をよく知っている人間と会った。お前と話したいと言って、裏で待っている。行ってあげてくれないか」
「一体、誰?」
ナーディアはきょとんとしたが、マリーノは名前は告げなかった。
「とにかく、行けばわかる」
「はあ……?」
オルランドに断って、ナーディアは店の外に出た。言われたとおりに店の裏に回ると、若い男が、一人で煙草を吹かしていた。服装から察するに、この店の従業員のようだ。彼と目が合ったとたん、ナーディアは大声を上げていた。
「コルラード兄様!?」
ナーディアは、ぽつりと呟いていた。さあな、とオルランドが首をかしげる。
「さすがの俺も、そこまでは知らん。……ただ、珍しいエメラルドグリーンの瞳をした女性だった、と漏れ聞いたことはある」
「エメラルドグリーン!?」
ナーディアは、身を乗り出していた。真っ先に浮かんだのは、ジャンニのことだった。
「バローネ伯爵と、そのエメリアという女性の間には、男の子がおりませんでしたか? 私より、二、三歳上くらいの」
エメリアこそ、ジャンニの母親ではないかと思ったのだ。するとオルランドは、あっさり頷いた。
「確かに、いたな。母親と共に追放されたが……。ん、もしや、それがお前の言っていた、初恋の少年か? 異国へ移住した、と言っていたじゃないか」
「初恋ではありませんが……、そうです」
ナーディアは、渋々認めた。
「あの時は、隠していて失礼しました。クーデターの関係者だと申したら、あなたがお気を悪くされるかと思ったのです」
「昔のことだ。そこまで、気を遣わんでいい。……しかしまあ、それでは再会は望めんな」
そうですね、とナーディアは嘆息した。同時に、納得できた気がする。ロベルトが、ジャンニの話題をことさらに嫌ったのは、単に謀反人一族だったからではない。愛した女性と、その息子を処分しなければいけなかったことが、辛くてたまらなかったのだろう……。
そこへ、マリーノが帰って来た。何やら、焦った顔をしている。
「ナーディア、少しいいだろうか。店の外で、お前をよく知っている人間と会った。お前と話したいと言って、裏で待っている。行ってあげてくれないか」
「一体、誰?」
ナーディアはきょとんとしたが、マリーノは名前は告げなかった。
「とにかく、行けばわかる」
「はあ……?」
オルランドに断って、ナーディアは店の外に出た。言われたとおりに店の裏に回ると、若い男が、一人で煙草を吹かしていた。服装から察するに、この店の従業員のようだ。彼と目が合ったとたん、ナーディアは大声を上げていた。
「コルラード兄様!?」