最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
2
コドレラへの出発前、ナーディアはモンテッラ邸へ立ち寄った。一定期間寮を離れる際は、貴重品は携帯していくのが規則である。ロレンツォからもらったネックレスを、ナーディアは傍に置いておきたくて、寮の自室に大切に保管していた。だが、さすがにコドレラまでは持って行けないと判断したのだ。
自室へ入ると、ナーディアは、滅多に開けないワードローブを開けた。中に備え付けられた引き出しの一番上に、ネックレスを丁寧にしまい込む。幼い頃から、宝物といえば、ここが隠し場所だったのだ。
ほっとして部屋を出ようとすると、ノックの音がした。フローラだった。
「辺境訪問が決まったのですって? 気を付けてね」
そう言うフローラは、すっかり明るい表情に戻っていて、ナーディアは安心した。そんなナーディアを見て、フローラが気恥ずかしそうにする。
「そうそう、この前は悪いことを言ったわ。イライラしていて、ごめんなさい」
「いえ、気にしていませんから。結婚前は、どなたでも神経質になるものですよ」
それでもフローラは、まだ申し訳なさそうな顔をしていた。
「それにしたところで……。決して、ナーディアが恋愛経験がないと、馬鹿にしているわけじゃないのよ? 何と言っても、一度に二人に求婚されたのですもの」
「……はあ」
それで悩んでいるのだが、とナーディアは思った。
「ナーディアは、自信を持ったらいいわ! この前、コンテ伯とご子息がご挨拶に来られたのよ。優しそうな男性じゃないの……。そして、ダリオだけれど」
フローラはなぜか、クスッと笑った。
「旅に出ると行って、急に家を出たのですって! きっと、傷心旅行ね。婿入りするという条件じゃ、彼に望みはないもの」
「一体、どこへ?」
ナーディアは面食らった。知らないわ、とフローラがかぶりを振る。
「ところで。コドレラといえば、ロレンツォ様の故郷ね」
自室へ入ると、ナーディアは、滅多に開けないワードローブを開けた。中に備え付けられた引き出しの一番上に、ネックレスを丁寧にしまい込む。幼い頃から、宝物といえば、ここが隠し場所だったのだ。
ほっとして部屋を出ようとすると、ノックの音がした。フローラだった。
「辺境訪問が決まったのですって? 気を付けてね」
そう言うフローラは、すっかり明るい表情に戻っていて、ナーディアは安心した。そんなナーディアを見て、フローラが気恥ずかしそうにする。
「そうそう、この前は悪いことを言ったわ。イライラしていて、ごめんなさい」
「いえ、気にしていませんから。結婚前は、どなたでも神経質になるものですよ」
それでもフローラは、まだ申し訳なさそうな顔をしていた。
「それにしたところで……。決して、ナーディアが恋愛経験がないと、馬鹿にしているわけじゃないのよ? 何と言っても、一度に二人に求婚されたのですもの」
「……はあ」
それで悩んでいるのだが、とナーディアは思った。
「ナーディアは、自信を持ったらいいわ! この前、コンテ伯とご子息がご挨拶に来られたのよ。優しそうな男性じゃないの……。そして、ダリオだけれど」
フローラはなぜか、クスッと笑った。
「旅に出ると行って、急に家を出たのですって! きっと、傷心旅行ね。婿入りするという条件じゃ、彼に望みはないもの」
「一体、どこへ?」
ナーディアは面食らった。知らないわ、とフローラがかぶりを振る。
「ところで。コドレラといえば、ロレンツォ様の故郷ね」