最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
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オルランド一行が、ラクサンド王国の最北端・コドレラに到着したのは、王都を出発して五日後のことだった。見渡す限り、山々と森が広がり、空気は同じ国内とは思えないほど冷たい。ここで一週間も、オルランドは何をするつもりだろうという疑問も湧いたが、ナーディアは口にしなかった。自分は単なる護衛役であり、政務に介入する立場ではないからだ。
コドレラの領主・サルトール辺境伯は、王太子の訪問を盛大に歓迎してくれた。長時間に及ぶ宴が終わると、一行はようやく宿に案内された。恐らくは、この土地で最も高級な宿屋なのであろう。広い中庭の他、建物内には執務に使用できる机付きの部屋や、遊戯室まで備えられていた。
当然ながら、オルランドには最も良い部屋が用意されていた。ところが、いつもならその隣がナーディアに割り当てられるのだが、オルランドは今回、違う階の部屋を使うよう言った。
「それでは、もしもの際に駆け付けにくいではないですか」
ナーディアは戸惑った。ナーディアが護衛を務めるのは昼間に限られており、夜は別の騎士らが、オルランドの寝室前の警備に当たる。とはいえ、有事の際に備えて、ナーディアも近くの部屋に待機するのが通例になっていたのだが。
「今回は、集中して過ごしたいから、同じ階には人がいて欲しくない。これだけ他に護衛がいれば平気だ」
オルランドがそう答えても、ナーディアは安心できなかった。
「騒々しくいたしませんから、せめて同じ階にいさせてくださいませ」
「ダメだ」
オルランドは、譲らなかった。
「お前には、すぐ下の階に部屋を用意してある。ロレンツォもだ。さあ、お前らも疲れただろう。とっとと下がれ」
不本意だが、引き下がるより他はなさそうだ。ナーディアとロレンツォは、オルランドに丁重に礼をした。するとオルランドは、思い出したように言った。
「長めの滞在になるから、二人には途中で休みをやろう。ロレンツォは、故郷を堪能するとよい」
「ご配慮、ありがとうございます」
ロレンツォはうやうやしく答えたが、表情はどこか浮かなかった。オルランドは、そんな彼を一瞥すると、意味ありげな笑みを浮かべた。
「……ああ、それから。お前らの泊まる階だが、他は全て空き部屋だそうだ」
それだけ告げると、オルランドはさっさと用意された部屋へ引っ込んだのだった。
コドレラの領主・サルトール辺境伯は、王太子の訪問を盛大に歓迎してくれた。長時間に及ぶ宴が終わると、一行はようやく宿に案内された。恐らくは、この土地で最も高級な宿屋なのであろう。広い中庭の他、建物内には執務に使用できる机付きの部屋や、遊戯室まで備えられていた。
当然ながら、オルランドには最も良い部屋が用意されていた。ところが、いつもならその隣がナーディアに割り当てられるのだが、オルランドは今回、違う階の部屋を使うよう言った。
「それでは、もしもの際に駆け付けにくいではないですか」
ナーディアは戸惑った。ナーディアが護衛を務めるのは昼間に限られており、夜は別の騎士らが、オルランドの寝室前の警備に当たる。とはいえ、有事の際に備えて、ナーディアも近くの部屋に待機するのが通例になっていたのだが。
「今回は、集中して過ごしたいから、同じ階には人がいて欲しくない。これだけ他に護衛がいれば平気だ」
オルランドがそう答えても、ナーディアは安心できなかった。
「騒々しくいたしませんから、せめて同じ階にいさせてくださいませ」
「ダメだ」
オルランドは、譲らなかった。
「お前には、すぐ下の階に部屋を用意してある。ロレンツォもだ。さあ、お前らも疲れただろう。とっとと下がれ」
不本意だが、引き下がるより他はなさそうだ。ナーディアとロレンツォは、オルランドに丁重に礼をした。するとオルランドは、思い出したように言った。
「長めの滞在になるから、二人には途中で休みをやろう。ロレンツォは、故郷を堪能するとよい」
「ご配慮、ありがとうございます」
ロレンツォはうやうやしく答えたが、表情はどこか浮かなかった。オルランドは、そんな彼を一瞥すると、意味ありげな笑みを浮かべた。
「……ああ、それから。お前らの泊まる階だが、他は全て空き部屋だそうだ」
それだけ告げると、オルランドはさっさと用意された部屋へ引っ込んだのだった。