最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

6

 オルランドは、翌朝から精力的に活動した。まずは、コドレラ領主・サルトール辺境伯との会談。その後は、領内の森林を訪れると言い出した。どうやらオルランドは、この地方の林業に関心があるようだった。





 出かける準備をしていると、サルトール辺境伯が、数名の若い青年を連れて来た。





「我が騎士団の精鋭たちでございます。王立騎士団の方々がいらっしゃるのは重々承知しておりますが、土地勘のある者がいると便利でございましょう。差し支えなければ、案内役を兼ねてお供させてくださいませ」





 そう言って辺境伯は、リーダーだという一人を紹介した。





「セルジオと申します。よろしくお願いいたします」





 青年は、丁重に挨拶した後、ロレンツォを見て顔を輝かせた。ロレンツォの方も、笑みを浮かべている。どうやら、知り合いらしかった。考えて見れば、ロレンツォは元々この騎士団にいたのだから、当然だろう。





 オルランドは、あっさり了承すると、サルトール辺境伯と何やら打ち合わせを始めた。セルジオは、懐かしそうにロレンツォに話しかけた。





「久しぶりだな、ロレンツォ。王都でも、活躍しているようじゃないか? 早速王太子殿下の護衛に抜擢されたとは」





 それを聞いたロレンツォは、焦った顔をした。





「殿下の護衛は、俺ではない。こちらのナーディアだ」



「あなたが? 女性ではないですか」





 セルジオはナーディアを一瞥すると、眉をひそめた。





「王太子殿下の護衛は、王宮近衛騎士団のトップが務められると伺いましたが」



「いかにも。私が、オルランド殿下の専属護衛を務めさせていただいている」





 内心の不快を押し隠して、ナーディアはキッパリと告げた。ナーディアの実力は、知られたこととはいえ、それはあくまで王都内の話だ。一歩王都を出れば、通用しないことの方が多い。だからこれまでも、他都市を訪れると、好奇の目で見られることはあった。だが、これほど露骨な反応をされたのは初めてだ。





「ああ、お飾りということですか」





 セルジオは、クスリと笑った。





「合点しました。女性の護衛では心許ないので、ロレンツォが補佐として随行しているわけですね?」



「俺は今回、故郷だからということで……」





 ロレンツォが弁明しかけたが、ナーディアはそれを制した。





「セルジオ殿。あなたは、我がラクサンド王国の王太子殿下が、お飾りの女性を護衛に付けるような人物とお思いか? あなたのご発言は、王太子殿下及び王宮近衛騎士団そのものへの、侮辱行為に当たりますぞ?」





 すぐさま表へ出て勝負を挑めば、実力を認めさせることはできる。だが、さすがにそんな子供じみた真似はできなかった。
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