最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
7
「それは、大変失礼しました」
セルジオは、案外あっさりと謝罪した。だがそこには、誠意は感じられなかった。不愉快さは拭えないが、相手が謝っている以上、こちらがさらに言い募るのは大人げない。ナーディアは、渋々引き下がったのだった。
その後、行動を共にするようになっても、セルジオの慇懃無礼な態度は変わらなかった。それは、ナーディアだけでなく、オルランドに対してもであった。表面上は敬っているが、それは本心ではない気がした。
ナーディアは、不思議に思った。オルランドは、人の心の機微に聡い男だ。セルジオの本心に気付いていないはずはないのに、なぜ同行させ続けるのだろうと思ったのだ。一言、サルトール辺境伯に断れば済む話なのに。
ナーディアのそんな思いに気付いたのか、ロレンツォは弁解するようにこう言い出した。
「セルジオが不愉快な態度を取って、申し訳ない」
「別に、ロレンツォが謝ることじゃないだろ」
「それにしたところで……」
ロレンツォは、ちょっとためらってから、話し出した。
「でも、セルジオにも事情があるんだ。実は彼は、元々イリヴェンの人間なんだ」
「そうだったのか?」
ナーディアは、意外に思った。
「正確には、母親がイリヴェンの女性だった。父親はラクサンドの男だったが、結婚してイリヴェンに住む道を選んだ。だからセルジオも、イリヴェンで生まれ育ったのだが……。父親は、シリステラとの戦争で戦死した。母親もその後亡くなったため、セルジオはラクサンドの伯父に引き取られたんだ。だから、ラクサンド・イリヴェン・シリステラの三国の関係については、色々と思うところがあるらしい」
シリステラとの戦争で親を亡くしたなら、恨むべきはシリステラではないのか、とナーディアは疑問を抱いた。なぜラクサンドの王太子に不遜な態度を取るのかはわかりかねたが、複雑な生い立ちゆえに、何か彼なりの考えがあるのだろう。それよりも、ナーディアには気付いたことがあった。
「もしかして……。ロレンツォが歴史や外交に関心を持つようになったのは、セルジオがきっかけなのか?」
予想通りロレンツォは、そうだと答えた。
「ナーディアにはひどい言動を取ったが、勉強家で博学な面もある。あいつからは、たくさん学んだよ」
それを聞いてナーディアは、ほっとするのを感じていた。故郷に良い思い出がない、偏見の目で見られていたと語ったロレンツォだったが、そのような友人もいたことに、深く安堵したのである。
セルジオは、案外あっさりと謝罪した。だがそこには、誠意は感じられなかった。不愉快さは拭えないが、相手が謝っている以上、こちらがさらに言い募るのは大人げない。ナーディアは、渋々引き下がったのだった。
その後、行動を共にするようになっても、セルジオの慇懃無礼な態度は変わらなかった。それは、ナーディアだけでなく、オルランドに対してもであった。表面上は敬っているが、それは本心ではない気がした。
ナーディアは、不思議に思った。オルランドは、人の心の機微に聡い男だ。セルジオの本心に気付いていないはずはないのに、なぜ同行させ続けるのだろうと思ったのだ。一言、サルトール辺境伯に断れば済む話なのに。
ナーディアのそんな思いに気付いたのか、ロレンツォは弁解するようにこう言い出した。
「セルジオが不愉快な態度を取って、申し訳ない」
「別に、ロレンツォが謝ることじゃないだろ」
「それにしたところで……」
ロレンツォは、ちょっとためらってから、話し出した。
「でも、セルジオにも事情があるんだ。実は彼は、元々イリヴェンの人間なんだ」
「そうだったのか?」
ナーディアは、意外に思った。
「正確には、母親がイリヴェンの女性だった。父親はラクサンドの男だったが、結婚してイリヴェンに住む道を選んだ。だからセルジオも、イリヴェンで生まれ育ったのだが……。父親は、シリステラとの戦争で戦死した。母親もその後亡くなったため、セルジオはラクサンドの伯父に引き取られたんだ。だから、ラクサンド・イリヴェン・シリステラの三国の関係については、色々と思うところがあるらしい」
シリステラとの戦争で親を亡くしたなら、恨むべきはシリステラではないのか、とナーディアは疑問を抱いた。なぜラクサンドの王太子に不遜な態度を取るのかはわかりかねたが、複雑な生い立ちゆえに、何か彼なりの考えがあるのだろう。それよりも、ナーディアには気付いたことがあった。
「もしかして……。ロレンツォが歴史や外交に関心を持つようになったのは、セルジオがきっかけなのか?」
予想通りロレンツォは、そうだと答えた。
「ナーディアにはひどい言動を取ったが、勉強家で博学な面もある。あいつからは、たくさん学んだよ」
それを聞いてナーディアは、ほっとするのを感じていた。故郷に良い思い出がない、偏見の目で見られていたと語ったロレンツォだったが、そのような友人もいたことに、深く安堵したのである。