最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
9
ロレンツォに連れて来られたのは、騎士団の訓練場だった。王立騎士団のそれよりはずっと狭く、整備状況も悪そうだが、皆真剣に汗を流している。どうやら、自主訓練中のようだった。
「おや? ロレンツォじゃないか」
外からのぞいていると、騎士たちはこちらに気付いたようだった。
「帰って来たのか? 久しぶりだなあ!」
皆、顔をほころばせると、次々に駆け寄って来た。ナーディアは、何だか嬉しくなった。彼らの反応からして、ロレンツォが騎士仲間から好かれていたのは明らかだった。
「そちらの女性は?」
一人が、ナーディアに目を留める。すると、別の一人があっと声を上げた。
「もしや、例の婚約者か?」
「いえ、私は……」
慌てて否定しようとしたナーディアだったが、騎士たちは、蜂の巣をつついたように騒ぎ始めた。
「『ラクサンドのネモフィラ』にお目にかかれるとは!」
「噂は、本当だったんだな。想像以上に、お美しい!」
ナーディアは、あっけにとられた。
(私が、美しいだと……?)
彼らに、冗談を言っている気配はない。本気で、フローラと間違えているようだ。ロレンツォは、そんなナーディアと騎士たちを見比べて、しばらくニコニコしていたが、ようやく説明し始めた。
「みんな。確かにこの通り、彼女は大変美しいが、残念ながら俺の婚約者ではないんだ。彼女は、ナーディア。王宮近衛騎士団のトップ騎士で、オルランド王太子殿下の専属護衛を務めておられる」
別の意味での歓声が上がった。
「王太子殿下の護衛だと?」
「最強騎士か。聞いたことがあるぞ!」
ナーディアは、一気に気分が晴れていくのを感じていた。『トップ騎士』、『王太子の護衛』。ナーディアが求めていた言葉を、ロレンツォはちゃんと使ってくれた。婚約披露パーティーでの出来事が蘇る。ダリオは、ナーディアを騎士として紹介することはなかった。当然だろう。彼はナーディアに、騎士団を辞めさせたかったのだから。
ロレンツォが、騎士たちに呼びかける。
「皆、今は自主訓練中なのだろう? 彼女に、手合わせを頼んだらどうだ」
「いいのか?」
ナーディアは、思わずロレンツォの顔を見ていた。彼が微笑む。
「体がなまってるんだろう? こいつらを、存分に叩きのめしてやれ」
久々の手合わせに、腕が鳴る。ナーディアは、顔がほころぶのを抑えられなかった。
「おや? ロレンツォじゃないか」
外からのぞいていると、騎士たちはこちらに気付いたようだった。
「帰って来たのか? 久しぶりだなあ!」
皆、顔をほころばせると、次々に駆け寄って来た。ナーディアは、何だか嬉しくなった。彼らの反応からして、ロレンツォが騎士仲間から好かれていたのは明らかだった。
「そちらの女性は?」
一人が、ナーディアに目を留める。すると、別の一人があっと声を上げた。
「もしや、例の婚約者か?」
「いえ、私は……」
慌てて否定しようとしたナーディアだったが、騎士たちは、蜂の巣をつついたように騒ぎ始めた。
「『ラクサンドのネモフィラ』にお目にかかれるとは!」
「噂は、本当だったんだな。想像以上に、お美しい!」
ナーディアは、あっけにとられた。
(私が、美しいだと……?)
彼らに、冗談を言っている気配はない。本気で、フローラと間違えているようだ。ロレンツォは、そんなナーディアと騎士たちを見比べて、しばらくニコニコしていたが、ようやく説明し始めた。
「みんな。確かにこの通り、彼女は大変美しいが、残念ながら俺の婚約者ではないんだ。彼女は、ナーディア。王宮近衛騎士団のトップ騎士で、オルランド王太子殿下の専属護衛を務めておられる」
別の意味での歓声が上がった。
「王太子殿下の護衛だと?」
「最強騎士か。聞いたことがあるぞ!」
ナーディアは、一気に気分が晴れていくのを感じていた。『トップ騎士』、『王太子の護衛』。ナーディアが求めていた言葉を、ロレンツォはちゃんと使ってくれた。婚約披露パーティーでの出来事が蘇る。ダリオは、ナーディアを騎士として紹介することはなかった。当然だろう。彼はナーディアに、騎士団を辞めさせたかったのだから。
ロレンツォが、騎士たちに呼びかける。
「皆、今は自主訓練中なのだろう? 彼女に、手合わせを頼んだらどうだ」
「いいのか?」
ナーディアは、思わずロレンツォの顔を見ていた。彼が微笑む。
「体がなまってるんだろう? こいつらを、存分に叩きのめしてやれ」
久々の手合わせに、腕が鳴る。ナーディアは、顔がほころぶのを抑えられなかった。