最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
14
「あの、その男性って……」
「どうして、よく覚えているかというとね!」
ナーディアの問いかけを、女店主は遮った。何やら、妙に興奮している。
「うちの長年の常連さんに、そっくりだったからなの! ここ最近はお見えにならないけれど、ずっと贔屓にしてくださっていてね……。髪と目の色も、さっきの男性と同じよ。年齢差を考えても、絶対に親子だと思う」
つまりはフェリーニ侯爵か、とナーディアは思った。最近現れないというのは、ロレンツォの母・シルヴィアが亡くなり、ロレンツォが王都へ移り住んだからだろう。
「その方、常連だったのですか?」
「ええ。定期的に王都から来られては、アクセサリーをお買い求めだったわ。きっとこちらに、現地妻がいらしたのね」
店主が、意味ありげな笑みを浮かべる。シルヴィアへのプレゼントだろう。それ以上聞いてはいけない気がしたのだが、店主のお喋りは止まらなかった。
「でも、あんな紳士的な方に想われるなら、お妾生活も悪くないかな、なんて思ったわよ。とても高価な品を、毎度お買い上げでね……。必ず、彼女の名前を彫るよう指示なさるのよ。『愛しいエメリアへ』って」
「エメリア!?」
ナーディアは、思わず聞き返していた。しまったという様子で、店主が口をつぐむ。
「失礼を。私ったら、喋りすぎましたわね。どうか、お忘れいただいて……」
どういうことだ、とナーディアは愕然とした。ロレンツォの母親は、シルヴィアという名ではないのか。
(愛人が二人いた? 同じコドレラに? まさか)
しかも、エメリアといえば、ジャンニの母親の名ではないか。ロベルト同様、フェリーニ侯爵が執心していた女性。そんな偶然があるだろうか……。
ナーディアは、一つの結論を導き出そうとしていた。
『シルヴィアなどという女性は存在しなかった』
フェリーニ侯爵の愛人としてコドレラに住んでいたのは、追放されたはずのエメリアだったのだ。
(つまり、ロレンツォは……)
「どうして、よく覚えているかというとね!」
ナーディアの問いかけを、女店主は遮った。何やら、妙に興奮している。
「うちの長年の常連さんに、そっくりだったからなの! ここ最近はお見えにならないけれど、ずっと贔屓にしてくださっていてね……。髪と目の色も、さっきの男性と同じよ。年齢差を考えても、絶対に親子だと思う」
つまりはフェリーニ侯爵か、とナーディアは思った。最近現れないというのは、ロレンツォの母・シルヴィアが亡くなり、ロレンツォが王都へ移り住んだからだろう。
「その方、常連だったのですか?」
「ええ。定期的に王都から来られては、アクセサリーをお買い求めだったわ。きっとこちらに、現地妻がいらしたのね」
店主が、意味ありげな笑みを浮かべる。シルヴィアへのプレゼントだろう。それ以上聞いてはいけない気がしたのだが、店主のお喋りは止まらなかった。
「でも、あんな紳士的な方に想われるなら、お妾生活も悪くないかな、なんて思ったわよ。とても高価な品を、毎度お買い上げでね……。必ず、彼女の名前を彫るよう指示なさるのよ。『愛しいエメリアへ』って」
「エメリア!?」
ナーディアは、思わず聞き返していた。しまったという様子で、店主が口をつぐむ。
「失礼を。私ったら、喋りすぎましたわね。どうか、お忘れいただいて……」
どういうことだ、とナーディアは愕然とした。ロレンツォの母親は、シルヴィアという名ではないのか。
(愛人が二人いた? 同じコドレラに? まさか)
しかも、エメリアといえば、ジャンニの母親の名ではないか。ロベルト同様、フェリーニ侯爵が執心していた女性。そんな偶然があるだろうか……。
ナーディアは、一つの結論を導き出そうとしていた。
『シルヴィアなどという女性は存在しなかった』
フェリーニ侯爵の愛人としてコドレラに住んでいたのは、追放されたはずのエメリアだったのだ。
(つまり、ロレンツォは……)