最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
6
ロレンツォは、三杯目のリキュールをグラスに注いだ。別のグラスを持ち出し、そちらにも注ぐ。
「俺ばかり飲んでるな……。お前も飲め」
ナーディアは、力なくかぶりを振った。とてもそんな気はしない。ロレンツォは、仕方なさげに自分の分を口に運ぶと、再び語り始めた。
「フローラ嬢への接近と共に企んだのは、長男・コルラード殿の追い出しだ。実は、王宮近衛騎士団に入団する前から、俺はたびたび王都を訪れては、彼について調べていた。幸いにも、彼は不出来らしい。さらに調べるうち、どうやら娼婦に入れあげているらしいという情報をつかんだ」
「それで『リマソーラ』に行ったのか」
ナーディアは、低く呟いた。
「橋の崩落の約一ヶ月前、お前によく似た男が来店し、兄様の贔屓の娼婦を指名していたと聞いた」
「そうだ。アガタという娼婦に金をやって、色々聞き出した。愚かにも、橋の建設予算を誤魔化して彼女に貢いでいるとわかり、これは使えると踏んだ。その矢先に、あの事故だ。俺は、率先して現場の対応に当たり、モンテッラ侯爵の信頼を得た。たまたまお前が来て、アガタの件をバラしたが、そうでなかったらさりげなく侯爵に吹き込むつもりだった」
「いずれにしても、大成功だったな」
ナーディアは、皮肉っぽく言った。
「宮廷舞踏会でのパヴァン殿の騒動も、お前が仕掛けたことだろう。彼を買収して、一芝居打ったな?」
ロレンツォは、一瞬意外そうな顔をしたものの、今さら誤魔化す気もしなかったのだろう。そうだ、と答えた。
「手っ取り早く、フローラ嬢との婚約に漕ぎ着ける必要があったからな。彼女の男性の好みは研究し尽くしていたが、インパクトのある演出が必要だった」
「しかし……。なぜ、あんな大事を起こした? 下手をすれば、外交問題だぞ?」
「パヴァン殿が、調子に乗って台本にないことまで喋ったんだ。それに俺は、外交問題になってもいいと考えていた」
何だと、とナーディアは眉をひそめた。
「俺ばかり飲んでるな……。お前も飲め」
ナーディアは、力なくかぶりを振った。とてもそんな気はしない。ロレンツォは、仕方なさげに自分の分を口に運ぶと、再び語り始めた。
「フローラ嬢への接近と共に企んだのは、長男・コルラード殿の追い出しだ。実は、王宮近衛騎士団に入団する前から、俺はたびたび王都を訪れては、彼について調べていた。幸いにも、彼は不出来らしい。さらに調べるうち、どうやら娼婦に入れあげているらしいという情報をつかんだ」
「それで『リマソーラ』に行ったのか」
ナーディアは、低く呟いた。
「橋の崩落の約一ヶ月前、お前によく似た男が来店し、兄様の贔屓の娼婦を指名していたと聞いた」
「そうだ。アガタという娼婦に金をやって、色々聞き出した。愚かにも、橋の建設予算を誤魔化して彼女に貢いでいるとわかり、これは使えると踏んだ。その矢先に、あの事故だ。俺は、率先して現場の対応に当たり、モンテッラ侯爵の信頼を得た。たまたまお前が来て、アガタの件をバラしたが、そうでなかったらさりげなく侯爵に吹き込むつもりだった」
「いずれにしても、大成功だったな」
ナーディアは、皮肉っぽく言った。
「宮廷舞踏会でのパヴァン殿の騒動も、お前が仕掛けたことだろう。彼を買収して、一芝居打ったな?」
ロレンツォは、一瞬意外そうな顔をしたものの、今さら誤魔化す気もしなかったのだろう。そうだ、と答えた。
「手っ取り早く、フローラ嬢との婚約に漕ぎ着ける必要があったからな。彼女の男性の好みは研究し尽くしていたが、インパクトのある演出が必要だった」
「しかし……。なぜ、あんな大事を起こした? 下手をすれば、外交問題だぞ?」
「パヴァン殿が、調子に乗って台本にないことまで喋ったんだ。それに俺は、外交問題になってもいいと考えていた」
何だと、とナーディアは眉をひそめた。