最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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「前にも話したが、俺は、ラクサンドはイリヴェンを独立国として尊重しなければいけないと考えている。僭越ながら、あの騒動を通じて問題提起をさせていただこうという思いもあったんだ。今のマルコ四世陛下には、なかなかおわかりいただけないかもしれない。だがオルランド殿下なら、気付いてくださるかもしれないと踏んだんだ」





「それで、わざと……?」





 ああ、とロレンツォは頷いた。





「彼は、聡明なお方だ。今回、俺をここへ連れて来られたのは、俺の正体に感付いておられるせいも・あると思う。だから来たくなかったし、マクシミリアーノ様も止めようとされていたんだが……」





「も、とは? 他にもあるのか?」





 ナーディアが聞きとがめると、ロレンツォは何とも言えない表情になった。





「お前は、気付かないのか? 殿下がなぜ、いつものようにお前を隣室になさらなかったか。俺と同じ階にして、ご丁寧にも他は全て空き室。オルランド殿下は、俺の気持ちに気付いて、試しておられる」





「気持ち、とは……」





 自分で尋ねておきながら、ナーディアは、答を聞くのが怖い気がした。ロレンツォが、一つため息を吐く。





「俺の計画は、全て順調だった。王宮近衛騎士団に入団し、標的の長女と婚約。長男は追い出し、長女の婿に収まり……。でも、一つだけ誤算があった」





 三杯目のリキュールを飲み終えたロレンツォが、ナーディアの分のグラスを手に取る。もう片方の手は、ナーディアの頬に伸びてきた。





「標的の次女に惚れたことだ。絶対に、好きになってはいけない相手なのに」





 自分もいつか、全く同じことを考えた、とナーディアはぼんやり思った。ロレンツォは、リキュールを口に含むと、そっと顔を近付けてきた。ゆっくりと、唇が重なる。
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