最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

4

 ハッと気が付くと、ベッドに寝かされていた。見覚えのない部屋だ。





「目が覚めたか?」





 声のする方を見れば、ロレンツォの姿があって、ナーディアは反射的に顔をしかめていた。





「お前、何やってる。王宮近衛騎士団員ともあろうものが、オルランド殿下のお傍にいなくてどうするんだ。というより、殿下はご無事なのか!」





「開口一番それか」





 ロレンツォは呆れたように言うと、ナーディアの寝ているベッドに腰かけた。上から、ふわりと抱きしめてくる。





「真っ先に口にするのが、他の男の名前とはねえ。相手が王太子殿下でも、俺は嫉妬する」





「冗談を言ってる場合じゃ……」





「オルランド殿下ならピンピンなさっておられるよ。心配するな」





 ナーディアは、深い安堵のため息をついた。





「ちなみに、ついさっきまでは、俺がお傍に控えていた。だが、たった今交代してきたんだ。言っておくが、殿下のご命令・・・・・・だからな」





「わかった……。だから、いい加減にどけよ」





 ロレンツォを押しのけようとするが、彼はナーディアを抱いたまま、放そうとしない。





「暴れると、傷が開くぞ。相当の重傷だったんだから」



「お前……。いちいち、卑怯だな」



「何と言われても結構。ナーディアに触れられるなら、いくらでも卑怯になってやるさ」





 ロレンツォは、ナーディアの体を労るように撫でさすりながら、嬉しそうに笑った。





「昨夜の痕、まだ残ってるな」





 一拍間を置いてから、はたと意味を理解したナーディアは、自由になる脚で、思いきりロレンツォに膝蹴りをくらわせていた。





「――っ!」





 結構な衝撃だったらしく、ロレンツォがうめく。ようやくナーディアを解放すると、彼はやおら姿勢を正した。ナーディアを、じっと見つめる。





「お前は、さすがだよ。実を言うと、案じていたんだ。体を、痛めてしまったのではないかと」





「見くびるな。あれくらいで傷つくほど、やわにはできてない」





 ナーディアは、ぷいと横を向いた。改めてその話題を持ち出されると、恥ずかしくて仕方ない。



 



「そうは言っても……。俺はお前に、いつでも騎士として活躍していて欲しいと思っているから。だから、孕ませないように細心の注意を払った」





「え……!?」





 ナーディアは、思わずロレンツォの方を向き直った。今彼は、何と言ったか。





(騎士として活躍していて欲しいから……? それで、子ができないようにしたのか……)
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