最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
第十三章 家族分裂

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 コドレラでの滞在を終える頃には、ナーディアが負った傷も大分癒えた。セルジオには極刑処分が下され、仲間の騎士らは、ラクサンド王国追放処分となった。サルトール辺境伯は、彼らの企みを知らなかったものの、管理不行き届きとして自ら処分を求めた。だがオルランドは、彼についてはお咎めなしとしたのだった。





 王都への帰り道、ナーディアは悩んでいた。オルランドにあそこまで言われた以上、護衛役を続けるしかないが、ロレンツォがあの夜のことを暴露したら、と怯えたのだ。かつてオルランドも言っていた通り、王立騎士団員の中には、ナーディアが王太子の護衛を務めることを不満に思う者もいる。真実が知れたら、ここぞとばかりに辞めろと言われるだろう。





(……それでも)





 ナーディアは決意した。父には打ち明けねばならない。彼を、守るために……。





 王都へ帰り着くと、ナーディアは騎士団の寮へと向かった。まずは荷物を置きたいし、ザウリに報告をせねばならない。





 コドレラから帰った旨を告げに行くと、ザウリは機嫌良くナーディアを迎えた。





「大活躍したそうじゃないか? 誇らしいよ」





 そう言ってザウリは、ナーディアの肩を軽く叩こうとした。それは普段からよくあることで、今まで気に留めたことはなかった。だがナーディアは、反射的に振り払っていた。





 ロレンツォの話が蘇ったからだ。この男が父を退団に追い込んだのか、とナーディアはザウリの顔を見つめた。ライバルがいない間に、自分が団長になろうという、姑息な魂胆で。決して許せるものではなかったし、その彼に触れられたくはなかった。





「ああ、すまん。つい癖が出たが、結婚前の娘にすべき振る舞いではなかったな」





 ザウリは、ナーディアの拒絶をそう解釈したようだった。ナーディアは、最低限の挨拶をして退室したが、腹の中は煮えくり返っていた。同時に、ふと思う。負傷させられただけでも、これほど憎く思うのだ。まして、父を殺されたロレンツォの怒りは、どれほどだろうかと。





(だからといって、彼の復讐計画を、見て見ぬふりするわけにはいかない……)
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