最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

10

(どうして……)





 フェリーニ侯爵が話したのか、とナーディアは一瞬思った。それを見透かしたように、ダリオが言う。





「父からは、何も聞いていない。僕が全て自分で調べた」



「どうやって……?」





 しらばくれるのは、無理そうだ。開き直って尋ねれば、ダリオはベッドサイドに椅子を運んで来た。ナーディアの枕元近くに腰かけて、淡々と語り始める。





「きっかけは、ヴァレンティノ侯爵だ。君は、面識はあるか?」



「お名前は存じている、というくらいだけど」





 そう、とダリオは頷いた。





「彼が、コルラードの贔屓の娼婦を身請けした男だよ。アガタ、とかいったか……。婚約披露パーティーの後、僕は彼の屋敷に招かれたんだ」





 ナーディアは、はたと思い出した。そういえばパーティーの時、ダリオはヴァレンティノ侯爵に呼ばれて席を外していた。





「君もよく知る通り、彼がアガタを身請けする手助けをしたのは、僕だからな。聞きたくもなかったが、散々彼女ののろけを聞かされたものだ……。だが、その際、僕は妙な情報を耳にした」





 ダリオは、眉をひそめた。





「アガタが娼婦時代に、彼女を熱心に指名していた客の中に、エメラルドグリーンの瞳をした若い男がいた、と聞いたんだ。さりげなく聞き出したところ、どうもロレンツォに特徴が似ている。こんな偶然が果たしてあるか、と僕は思った」





 やはりダリオも同じ所に注目したか、とナーディアは思った。





「元々僕は、ロレンツォが計画的にモンテッラ家に婿入りしたのじゃないかと、疑っていたからな。それでコドレラへ行って、徹底的に調査した。あのガラス細工店の店主は、ずいぶんと口が軽いな」





 ダリオは、クスリと笑った。





「君も、行ったのだろう? 僕はあの店に、二度来店したからな。二度目に行った際、君らしき女性が来たと聞いたよ」





 ええ、とナーディアは頷いた。しばらく、沈黙が続く。やがてナーディアは、思い切って尋ねた。





「ダリオ。このことを、公にするの? ロレンツォの正体を、暴露するつもり?」
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