最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
11
「まさか」
ダリオは、即座に答えた。
「そんな真似をすれば、フェリーニ家の家名に傷が付くじゃないか。当主が、謀反人の家族を庇い立てし、果ては家に入れたなど……」
ナーディアは、ほっと胸を撫で下ろした。ダリオは、そんなナーディアを一瞥すると、「だが」と続けた。
「放置するわけにもいくまい。ロレンツォがモンテッラ家に入りたがった理由が、ようやくわかったよ。ロベルト様は、クーデターの鎮圧リーダー。逆恨みで、復讐するつもりだろう?」
「逆恨みなんかじゃないわ」
ナーディアは、思わず言い返していた。父ロベルトの恥をさらすことになるのはわかっていたが、それでもロレンツォを擁護せずにはおれなかったのだ。あの夜彼から聞いた話を、ナーディアは全てダリオに語った。
「……なるほどね」
ダリオは真剣に耳を傾けていたが、やや首をひねった。
「おおむね、理解はしたが……。いくつか、疑問が残るな。まずは、ロベルト様のことだが。僕は、昔から彼を存じているが、そんな卑劣な人間にはとても見えない」
「そう言ってくれるのは、ありがたいけれど……」
「それに」
ダリオは、ナーディアの言葉を遮った。
「バローネ伯爵は、無実だったということだが。それは本当だろうか。『有罪』を証明するのはたやすいが、『無罪』を証明するのはなかなか困難だと、僕は思うが」
「でも……。ロレンツォは、フェリーニ侯爵から証拠を見せられた、と言ったわ」
なぜこんなにもロレンツォを擁護しているのだろう、とナーディアは思った。言えば言うほど、父ロベルトを貶めることになるというのに。
「父が、ねえ……。それもまた、僕は腑に落ちないのだが」
ダリオは腕を組んだ。
「正直、父の行動には疑問しか感じない。バローネ伯爵と友人だった、ということだが、それは信じがたい。父は、フェリーニ家と同等以上の家柄の人間、または自分の益になる人間としか付き合わないからだ」
「それは、口実でしょう。ロレンツォのお母様を、お好きだったからよ」
「まあ、それはそうだろうね。エメリアという女性の名は、母からチラッと聞いたことがある」
ダリオはそう認めたものの、なおも首をかしげた。
「それにしたところで、そこまで手を貸すものだろうか……」
「愛する女性のために、必死になられたのでしょうよ。女性の足にマメをこしらえる男性には、想像できないでしょうけど」
「あれは、申し訳なかったと言ったろう。根に持つなよ」
ダリオが、バツが悪そうな顔で口を尖らせる。
ダリオは、即座に答えた。
「そんな真似をすれば、フェリーニ家の家名に傷が付くじゃないか。当主が、謀反人の家族を庇い立てし、果ては家に入れたなど……」
ナーディアは、ほっと胸を撫で下ろした。ダリオは、そんなナーディアを一瞥すると、「だが」と続けた。
「放置するわけにもいくまい。ロレンツォがモンテッラ家に入りたがった理由が、ようやくわかったよ。ロベルト様は、クーデターの鎮圧リーダー。逆恨みで、復讐するつもりだろう?」
「逆恨みなんかじゃないわ」
ナーディアは、思わず言い返していた。父ロベルトの恥をさらすことになるのはわかっていたが、それでもロレンツォを擁護せずにはおれなかったのだ。あの夜彼から聞いた話を、ナーディアは全てダリオに語った。
「……なるほどね」
ダリオは真剣に耳を傾けていたが、やや首をひねった。
「おおむね、理解はしたが……。いくつか、疑問が残るな。まずは、ロベルト様のことだが。僕は、昔から彼を存じているが、そんな卑劣な人間にはとても見えない」
「そう言ってくれるのは、ありがたいけれど……」
「それに」
ダリオは、ナーディアの言葉を遮った。
「バローネ伯爵は、無実だったということだが。それは本当だろうか。『有罪』を証明するのはたやすいが、『無罪』を証明するのはなかなか困難だと、僕は思うが」
「でも……。ロレンツォは、フェリーニ侯爵から証拠を見せられた、と言ったわ」
なぜこんなにもロレンツォを擁護しているのだろう、とナーディアは思った。言えば言うほど、父ロベルトを貶めることになるというのに。
「父が、ねえ……。それもまた、僕は腑に落ちないのだが」
ダリオは腕を組んだ。
「正直、父の行動には疑問しか感じない。バローネ伯爵と友人だった、ということだが、それは信じがたい。父は、フェリーニ家と同等以上の家柄の人間、または自分の益になる人間としか付き合わないからだ」
「それは、口実でしょう。ロレンツォのお母様を、お好きだったからよ」
「まあ、それはそうだろうね。エメリアという女性の名は、母からチラッと聞いたことがある」
ダリオはそう認めたものの、なおも首をかしげた。
「それにしたところで、そこまで手を貸すものだろうか……」
「愛する女性のために、必死になられたのでしょうよ。女性の足にマメをこしらえる男性には、想像できないでしょうけど」
「あれは、申し訳なかったと言ったろう。根に持つなよ」
ダリオが、バツが悪そうな顔で口を尖らせる。