最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
第十六章 二つの狂気

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 三日間に及ぶラクサンド王国内のクーデターは幕を閉じ、オルランド二世が誕生した。





 新国王は、直ちにシリステラと同盟を結んだ。実は、シリステラ内でも同様に、クーデターが起きていたのだ。現国王の統治体制に不満を抱く彼の子供たちは、父王を廃する決意をした。長男は、父王と共にイリヴェンへ出兵すると見せかけて、途中で王に反旗を翻した。彼は父との戦いに勝利し、シリステラの新国王として即位した。そして、長女・エレオノーラ王女は、かねてからラクサンドのオルランド王太子と通じていたのだ。それゆえ自国でのクーデター成功後、ラクサンドへ応援に駆け付けたのである。





 同盟の内容は、今後シリステラは二度とイリヴェンに戦を仕掛けない代わりに、ラクサンドはシリステラへ木材を輸出する、というものだった。海に面したシリステラは、昔から造船業が盛んだった。だが、そちらに木材を供給することにより、国内では燃料不足が発生していた。石炭目当てでイリヴェンに戦を仕掛けていたのは、それゆえである。そこでラクサンドは、木材をシリステラへ輸出することにしたのだ。





 その木材の供給源は、かねてから林業が盛んだったコドレラである。オルランドがここを長期にわたり視察したのは、それを考えていたからだったのだ。コドレラが豊かになると、サルトール辺境伯は大喜びしている。





 また、オルランドは、国内体制も迅速に整えた。彼は、父王マルコ四世を幽閉し、父側に付いた貴族らからは爵位や領地を剥奪した。当然、モンテッラ家、フェリーニ家も含まれる。だが、処刑という措置を執らなかったのは、ロレンツォのような存在があったからと考えられた。





 さらにオルランドは約束通り、過去にチェーザレ一派として処分された面々の、名誉回復に努めた。追放された者は帰還させ、爵位を復活させると共に、国王一派から取り上げた領地を分け与えた。





 そして、マルコ四世に付いた王立騎士団は、解体処分となった。ザウリ、マリーノをはじめとする彼らは投獄され、王立騎士団は新しいメンバーを迎えて再編成された。加わったのは、オルランドに味方した領主らが抱える騎士団から選ばれた、精鋭たちである。中には、ナーディアがコドレラで手合わせした者もいた。





 新王立騎士団長には、九死に一生を得たロレンツォこと、ジャンニ・ディ・バローネ伯爵が就任した。副団長に選ばれたのは、国王の専属護衛でもある、ナーディア・モンテッラである。この二人が選ばれることに、異論を唱える者は誰一人いなかった。
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