最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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「フェリーニ侯爵は、俺を利用して、ロベルト様に嫌がらせをしようとしたのでしょうな」





 ジャンニの言葉に、ロベルトは、そうだろうと頷いた。





「コルラードから君がイヴァノの息子だと聞かされて、私は驚愕した。その前にナーディアから、『罪のない人間を陥れた』と言われたことと併せて、ピンときた。マクシミリアーノが君に嘘を吹き込み、私に復讐させようとしているのだろうと……。だから焦って、フローラとの婚約を解消させたのだ」





 ジャンニが、顔を覆う。





「俺は、大馬鹿ですね……。フェリーニ侯爵が、父上の謀反の証拠をあなたに託したのは、父上が憎かったのでしょう。彼は、母上に想いを寄せていたから……。そうとも知らずに手懐けられ、挙げ句には、愛する女性の父親に、見当違いの復讐を仕掛けるなど……」





「それは、君の責任ではないと言っているだろう」





 ロベルトが、ジャンニに優しく語りかける。





「それより、今日の用件はそれだけではあるまい? 二人そろって来たのには、別の理由があるのだろう?」





 はい、とジャンニは姿勢を正した。





「フローラ嬢との婚約を解消しておきながら、こんなことを申し上げるのは恐縮なのですが……。俺は実は、ナーディア嬢とずっと愛し合っておりました。どうか、彼女との結婚をお許しいただけないでしょうか」





 ロベルトは、間髪入れずに答えた。





「許さないはずがないだろう」





 ナーディアとジャンニは、思わず見つめ合っていた。ロベルトが微笑む。





「君が、ナーディアがかつて剣術大会で戦った少年だったのだな。ナーディアはあの時、『ジャンニ』の名を繰り返していたものだ……。だが私にとっては、耳にしたくない名前だった。イヴァノは、私にとって良き友人だったのだ。志の方向は違えど、国を思うという点で私たちは共通していた。そんな彼を処刑し、妻子を追放せざるを得なかったことが辛くて……。だからつい、彼らの話題はするなとナーディアに言ってしまった」





 十四年越しの真実に、ナーディアはただ目を丸くしていた。
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