最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

6

 モンテッラ家も、マルコ四世側に付いたため、爵位を剥奪されるのだ。ナーディアは、いたたまれなくなった。





「お父様、そのようなことはありません。コルラード兄様は、誰がお育てになろうが同じです。ダリオだって、さじを投げました」





 フェリーニ家も爵位を剥奪される以上、当然コルラードを養うどころではない。放り出された彼は、元の居酒屋勤務に戻るとのことである。





「ロベルト様。そのように仰らないでください。ナーディアがいるではありませんか。こんなに素直で心優しい女性を、俺は知りません」





 励ますように、ジャンニも言う。彼は、少しためらってからこう続けた。





「そして、脚のお怪我のことなのですが。実は……」





 ジャンニは、五年前のザウリの企みについて語った。





「本当に、申し訳ありませんでした。そして、クーデター中にザウリがあなたを襲った件ですが。実は、俺のせいかもしれません」





「どうして?」





 ナーディアは、驚いてジャンニの顔を見た。





「クーデター前、ザウリがナーディアを退団させようとしたことに腹を立てた俺は、五年前の件について証人がいる、と彼にほのめかしたのです。それは、あなたが庇った部下の男性です。彼は、あなたに対する贖罪の気持ちから、あの事件についてずっと調べており、ザウリの企みだと嗅ぎつけたのです。ですがザウリとしては、『証人』がロベルト様だと思ったのかもしれない。それで、口封じに狙ったのかもしれません……」





 ロベルトが、かぶりを振る。





「気に病むな。悪いのは、マクシミリアーノとザウリだ。それに君の行動は、ナーディアを思ってのことだろう? それほどまでに愛情を注いでくれる男に娘を託せて、私は嬉しいよ。父親は、こんな男だが、娘をよろしく頼む……」





 言葉の途中で、ロベルトはカッと目を見開いた。視線は、ナーディアたちの背後に注がれている。振り返ったナーディアは、目を疑った。いつの間にか寝室の扉が開き、フェリーニ侯爵が立っていたのだ。髪はボサボサで、目は血走っている。尋常でないのは明らかだった。
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