最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

2

「楽しみにしているのですよ? 王太子時代、なかなかお妃を迎えられないので、実はやきもきしていたのです」





「そりゃ、一国の王妃ともなれば、慎重に選ばないといかんだろう。家柄しか取り柄のない、中身のない女じゃ困る。エレオノーラ王女を迎えるのは、ラクサンドの国益になると判断した」





 オルランドがのらりくらりと縁談をかわしてきたのは、これを見越していたのか、とナーディアは思った。





「素晴らしいご判断だと思います。王女殿下は、とても素敵な方ですもの……。実は私、憧れ、お慕いしているのです」





 目を輝かせるナーディアを見て、オルランドは苦笑した。





「そりゃ、同類だからだろう」





「はい?」





「いや、何でも……。それより、楽しみにしておれ。王女は、シリステラ時代の騎士団を連れて嫁いで来るんだ。女性ばかりで騎士団を構成していたそうだから、ラクサンドも女性騎士が増えるぞ」





「ああ、それは大変楽しみです!」





 これまで王宮近衛騎士団に、女性はナーディア一人だった。やはり、同性の仲間が増えるというのは、嬉しく心強い。





「それにしても、ラウラさんもその一員だったとは思いませんでした」





 ナーディアは、ふと思い出した。居酒屋店員のラウラは、何とエレオノーラ王女付きの女性騎士だったのだ。あの店には、密偵として潜り込んでいた。オルランドが再三『視察』と称して通っていたのは、ラウラを通じて、エレオノーラ王女と情報交換するためだったのである。





(しかし、あの大きな胸を抱えて、騎士としての活動ができるものだろうか……?)





 ナーディアの貧相な胸ですら、布で押さえているくらいなのに。ナーディアは、疑問を抱いた。それと同時に、ふと気が付く。





「そういえば陛下、胸は最重要事項じゃなかったでしたっけ?」





 エレオノーラ王女は、どう見ても、ナーディアに負けず劣らずの貧乳なのだが。するとオルランドは、呆れたようにため息をついた。





「お前は、人の話を鵜呑みにし過ぎだ。冗談に決まってるだろう」




 何だ、とナーディアは拍子抜けした。失礼しましたと挨拶して、踵を返す。退室しようとしたその時、オルランドは小さく呟いた。





「それに俺は、実は洗濯板も嫌いではない」





 聞き違えたか、と思った。だがオルランドは、行けと手で合図する。ナーディアは仕方なく、一礼して部屋を出たのだった。
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