最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

6

「確かにナーディアは苦労が多いけれど……。その言葉を聞いて、私、安心したわ」



「……なぜです?」





 ナーディアはきょとんとした。





「あなた、いつも、『女』は封印したと言っているでしょう? でもその発想は、女性そのものだわ」



「そうでしょうか……?」





 確かに、常々そう言ってきたが。フローラの言うことは、ピンとこなかった。





「そうよ」





 念を押すように言った後、フローラはとんでもないことを言い出した。





「だからね、ナーディア。あなたもそろそろ恋愛に目を向けてもいい頃じゃなくて?」



「――何を仰います!?」





 ナーディアは目を剥いた。





「私は、亡き王妃様とのお約束で……」



「それは知っているわよ。でも、あなたとオルランド殿下がどうこうなるだなんて考える人間は、ここラクサンドに存在しないわ」





 それは、そうだろうけれども。ナーディアが返事に困っていると、フローラはたたみかけるように言った。





「何も、結婚して騎士団を辞めろと言っているわけじゃないのよ? でも、恋愛くらいは自由にしていいと思うの。王妃様は、もうお亡くなりになった。いつまでも縛られるのは、かわいそうだわ」



「……」





 オルランドと同じことを言うな、とナーディアは思った。





(でも、いきなりそんなことを言われても。ずっと、視野に入れることすらなかったのに……)





 王妃と約束する以前から、ナーディアは恋愛やお洒落といった、年頃の女性が関心を持つような事柄からは目を背けてきた。士官学校、騎士団という男だらけの社会で舐められないようにするためには、そうせざるを得なかったのだ。





「そろそろ開始時刻ね……。もう行くけれど、是非考えてみてね」





 優しく念を押すと、姉は去って行ったのだった。
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