最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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 応接間に入ると、そこには懐かしい姿があった。ダリオ・ディ・フェリーニだ。ナーディアより四歳年上の二十三歳で、落ち着いたダークブラウンの髪と、思慮深そうなグレーの瞳を持つ。コルラードと同い年のため、昔からよく一緒に遊んだものだ。





「ナーディア、久しぶり……。何だか、顔色が悪くないかい?」





 ダリオは、ナーディアを見て笑顔になったものの、一転して心配そうに顔を曇らせた。先ほどの会話が気になりすぎて、無意識に顔を強張らせていたらしい。





「今日の訓練がきつかっただけよ。慣れているから、平気」





 士官学校に入る前の少女時代は、ナーディアも普通に女言葉を話していた。幼なじみのダリオと接すると、自然と口調もその頃に戻っていくのだ。





「仕事だから仕方ないのだろうけど……。無理はするなよ?」





 気遣わしげにそう言った後、ダリオは突如改まった口調になった。





「ところで。改めておめでとう、だね。幼い頃から親しくさせてもらっていたけれど、こんな形でご縁ができるとは」





 ナーディアは、やや複雑な気分になった。突然弟ができたことを、ダリオは一体どう思っているのだろう。





(……それに)





 ダリオはフローラが好きなのではないか、とナーディアは前から疑っていた。彼は昔から、口実をもうけてはモンテッラ家に出入りしたがった。二十歳を過ぎた頃からは、ダリオにも縁談がひっきりなしに持ち込まれているようだが、誰に興味を示すでもない。フローラを想い続けているせいではないか、とナーディアは推測していた。
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