最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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「――はああ!? ちょっと、止めてよ!」





 一瞬絶句した後、ナーディアは大声を上げていた。改まった催しには、ナーディアはいつも、王宮近衛騎士団の制服で参加する。男性騎士らも、それを礼服代わりに使用しているから、構わないだろうという判断である。ドレスで参加したことなど、これまで一度もない。





「大体、どうしてそんな必要があるのよ?」



「皆に、君を女性として認識してもらうためだ。君は今年で十九だろう。こういう場で、相手を見つけようとは思わないのか?」



「ダリオ、知っているでしょう。私は、亡き王妃様とのお約束で……」





 ここ最近で、この台詞を口にするのは三度目のような気がするのだが、とナーディアはチラと思った。





「そんなものはもう時効だろう」





 この返しも、三度目な気がする。ナーディアは、ダリオをじろりとにらんだ。





「何なの、みんなして? 私に恋をしなさいっていう運動中なの?」



「皆とは?」





 ダリオが、目を丸くする。





「オルランド殿下に、フローラ姉様よ」



「なるほどね。彼らは、ナーディアのことを心配しているんだな」





 ダリオが、合点したように頷く。





「自分のことを気遣ってくれる人間の言葉には、耳を貸すべきだ……。ということでナーディア、至急ドレスを仕立てたまえ。幸い、パーティーまでは、まだ時間がある」





「私がドレスなんか着ても、似合わないわよ……。コルラード兄様が見たら、罰ゲームかって笑うに決まってるわ」





 宮廷舞踏会での彼の暴言が蘇り、ナーディアは憤然とした。





「コルラードの戯れ言なんぞ、放っておけ!」





 苛立ったように、ダリオがわめく。





「あいつに、ナーディアのことをどうこう言う資格があるものか。あんな、娼館に入り浸っているような奴……」



「何ですって!?」





 思わず聞き返せば、ダリオはしまったという顔をした。
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