最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
3
婚約披露パーティーの細かな采配は、ダリオがしている。王宮近衛騎士団のメンバーを招待したのは、彼の仕業に違いなかった。
(冗談じゃない……!)
女を捨てたラクサンドの最強騎士が、ドレス姿でパーティーに出席した、と噂になるのは覚悟していた。だが、実際に同僚たちの目にさらされるとなれば、恥ずかしさのレベルが違う。ナーディアは、必死で尋ねた。
「ええと……。皆、出席するのか?」
「そりゃ、ご招待されたんだから。俺たちなんぞが行っていいのか、という気もしたけれど」
マリーノが答える。別の同僚は、複雑そうな顔をした。
「俺は、正直迷うな。俺の家とフェリーニ家とでは、格が違いすぎる。萎縮してしまいそうだ」
是非萎縮してくれ、とナーディアは念を送った。できることなら、全員に欠席して欲しい。ところが、こんなことを言い出す者がいた。
「でも、フェリーニ家繋がりなら、素敵な令嬢が大勢いらしてそうじゃないか。俺は、勇気を出して出席するぞ。フローラ嬢のことは忘れて、新しい女性との出会いを探すんだ!」
(頼む。今だけは、勇気を出さないでくれ!)
ナーディアの内心の絶叫も空しく、皆はそうだそうだと盛り上がり始めた。仕方ない、とナーディアは決意した。やはりダリオに言って、ドレスの件は諦めてもらおう。コルラードのことは、自分で何とかするのだ。
それにしても、とナーディアは密かに歯ぎしりした。優しそうに見えた幼なじみが、こんな真似をするなんて。嫌がらせとしては、最上級だ。
(まるで、悪魔のような奴だ……)
「おや、ダリオ様だ」
誰かの呟きに、ナーディアはハッと顔を上げた。見れば調練場の門をくぐって、その悪魔がやって来るではないか。
(冗談じゃない……!)
女を捨てたラクサンドの最強騎士が、ドレス姿でパーティーに出席した、と噂になるのは覚悟していた。だが、実際に同僚たちの目にさらされるとなれば、恥ずかしさのレベルが違う。ナーディアは、必死で尋ねた。
「ええと……。皆、出席するのか?」
「そりゃ、ご招待されたんだから。俺たちなんぞが行っていいのか、という気もしたけれど」
マリーノが答える。別の同僚は、複雑そうな顔をした。
「俺は、正直迷うな。俺の家とフェリーニ家とでは、格が違いすぎる。萎縮してしまいそうだ」
是非萎縮してくれ、とナーディアは念を送った。できることなら、全員に欠席して欲しい。ところが、こんなことを言い出す者がいた。
「でも、フェリーニ家繋がりなら、素敵な令嬢が大勢いらしてそうじゃないか。俺は、勇気を出して出席するぞ。フローラ嬢のことは忘れて、新しい女性との出会いを探すんだ!」
(頼む。今だけは、勇気を出さないでくれ!)
ナーディアの内心の絶叫も空しく、皆はそうだそうだと盛り上がり始めた。仕方ない、とナーディアは決意した。やはりダリオに言って、ドレスの件は諦めてもらおう。コルラードのことは、自分で何とかするのだ。
それにしても、とナーディアは密かに歯ぎしりした。優しそうに見えた幼なじみが、こんな真似をするなんて。嫌がらせとしては、最上級だ。
(まるで、悪魔のような奴だ……)
「おや、ダリオ様だ」
誰かの呟きに、ナーディアはハッと顔を上げた。見れば調練場の門をくぐって、その悪魔がやって来るではないか。