最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

4

「これは、ダリオ様」



「ちょうど、婚約披露パーティーの話をしていたんですよ。お招きありがとうございます」





 同僚らは、ダリオの元へ駆け寄ると、口々に礼を述べた。





「とんでもない。大事な弟の、仕事仲間の方々ですからね。私も是非、親交を深めたかったんです。良い機会が得られました」





 ダリオが鷹揚に微笑む。やはりお前の仕業か、とナーディアは毒づいた。呪詛の念を込めてにらみつけていると、ダリオはふとナーディアの顔を見た。





「そうそう、ナーディア。昨日話し合っていた件だけれど……」





(馬鹿野郎。ドレスのことをバラすな!!)





 ナーディアは、大慌てでダリオの言葉をさえぎった。





「あっ、パーティーの段取りのことね!? そうでしょう?」





 同僚らは、それを聞いて顔を見合わせ合った。





「両家で、お打ち合わせでもあるのかな」



「邪魔をしては、申し訳ないですね」





 気を利かせたらしき彼らは、幸いにも、ダリオに挨拶してその場を去って行った。二人きりになると、ナーディアはダリオに詰め寄った。





「どういうつもり!? 私を、見世物にする気?」



「……? 何のこと?」





 ダリオがきょとんとする。ナーディアは、ますます苛立つのを感じた。





「とぼけないで! ドレスのことに決まってるでしょ。よりによって、騎士団の皆まで招くなんて……」



「……ああ」





 ダリオは、合点したような顔をした。





「見世物……という表現はどうかと思うけれど。見せつけたいな、と思ったのは事実だよ」



「この性悪め……」





 ナーディアは、キッとダリオを見すえて言い放った。





「やっぱり、昨日の話はナシにして。コルラード兄様のことなら、私が何とかするから。今夜、また外出許可を取って、兄様を説得しに行くわ」





「いや、それは無理だね」





 ダリオはなぜか、自信たっぷりに言い切った。





「モンテッラの領内で、橋の崩落事故があったんだよ。ロベルト様は体調が思わしくないので、コルラードが代わりに対応に行くことになった。今日から数日間、彼は王都を留守にする」
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