最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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 その夜、仕事を終えたナーディアは、自室で一人考え込んでいた。ダリオには大見得を切ってしまったものの、果たしてコルラードをどう説得しようかと思ったのだ。そもそもコルラードは、いつ王都へ戻って来るのだろう。気が短いナーディアとしては、事故現場へ飛んで行って説得を開始したいくらいだ。





(……待てよ)





 ナーディアは、名案を思いついた。物は考えようだ。コルラード不在の間に、娼館へ行って、情報収集しておくのはどうだろう。贔屓の娼婦がいるのか、どれくらいの頻度で通っているのか、などを把握しておけば、解決の糸口が見つかるかもしれない。





(先手必勝と言うしね)





 ナーディアは、いそいそと外出の支度を始めた。コルラードが通っている娼館は、大体予想がつく。王族や高位の貴族には、専用の高級娼館があるが、それ以外の男性貴族のほとんどは、『リマソーラ』という店を利用するのだ。躾の行き届いた娼婦がそろっており、衛生面も徹底して管理されているので、評判が良いのである。





(客のプライバシーにも配慮しているとか……。ん?)





 姿見に向かって身支度を調えていたナーディアだったが、ふと気付いた。ということは、ナーディアが行って尋ねたところで、コルラードの情報など教えてもらえないのではないか。しかも、コルラードとナーディアは、単に目と髪の色が同じというだけでなく、顔立ちもよく似ているのである。妹だというのは、一目瞭然だろう。店側は、余計警戒するはずだ。





(何で私は、兄様に似てしまったんだ! 運痴は、似なくて助かったけど!)





 一人毒づきながら鏡をにらみつけていたナーディアだったが、そこへ名案が浮かんだ。





(そうだ。それを逆に利用すればいいじゃないか)





 大きく頷くと、ナーディアは自室を飛び出した。向かう先は、マリーノの部屋である。
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