最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
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その後ナーディアは、マリーノの協力を得て、手早く変装した。元々、職務時間以外でも男物の服を着る習慣であるナーディアだが、さすがに貴族男性の正装は持っていない。ジュストコールとジレ、首回りを飾るクラヴァットは、マリーノから借りた。一応は伯爵家の子息だけあって、彼は一通りの正装を常備していたのだ。
「悪いな、何から何まで」
着替えて自室から出て来ると、マリーノはなぜか顔を赤くした。
「何だよ?」
「いや、さすがのお前でも、俺の服を着たら華奢に見えるなって」
女性としては遙かに体格の良いナーディアだが、確かにマリーノのジュストコールは、肩幅や袖が余る。ナーディアは、やや不安になった。
「不自然かな?」
「いや、いんじゃね? 夜で暗いし、少しくらい誤魔化せるだろうさ」
マリーノは、妙に機嫌良く頷いた。
「あ、帽子も忘れんなよ?」
「そうだった」
ナーディアは、髪を短く耳の下で切りそろえている。とはいえ、男性の髪型とも違うのだ。これまたマリーノから借りた帽子を目深にかぶって、ナーディアは中途半端な髪をどうにか隠した。
「じゃあ行くか」
寮を出る前、二人は団長のザウリの部屋を訪れて、外出許可を求めた。ザウリはあっさり承諾したものの、ナーディアを見てあっけにとられた顔をした。
「ところで、何だ、その格好は? 仮装舞踏会にでも出かける気か? それとも、ついにそういう趣味に走ったか」
「前者です!」
ナーディアは、間髪入れずに答えた。同時に、そういう趣味って何だ、と思う。
「二人とも、羽目を外しすぎて明日の調練に影響させるなよ?」
幸いにもザウリは、それ以上追及することはなかった。声をそろえて大丈夫ですと答えれば、ザウリは軽く頷いた。
「ま、お前らなら安心だが。責任感も強いし、真面目だ。……それに比べて」
ザウリは、忌々しげにため息をついた。
「あの新人には、困ったものだ」
「……ロレンツォがどうかしましたか?」
気になり、ナーディアは尋ねてみた。ザウリは、眉間にきつく皺を寄せた。
「昨夜いきなり申し出て、今日は調練だけ出席して、あとは休暇にしてくれと。入団したばかりの身で、何を考えているのかと思ってね。王宮近衛騎士団がどういう存在か、わかっているのかと言いたい」
持ち場が異なるので、ロレンツォが今日、休暇を取っていたとは知らなかった。確かに、直前の申し出となれば、ザウリが怒っても当然だ。どうしたのだろう、とナーディアは想像を巡らせた。調練後、ダリオと婚約披露パーティーに関する打ち合わせをしていたようだが。婚約に向けた動きの中で、何かトラブルでもあったのだろうか。
(コルラード兄様の件が解決したら、私も協力しよう……)
ナーディアは、そう心に決めたのだった。
「悪いな、何から何まで」
着替えて自室から出て来ると、マリーノはなぜか顔を赤くした。
「何だよ?」
「いや、さすがのお前でも、俺の服を着たら華奢に見えるなって」
女性としては遙かに体格の良いナーディアだが、確かにマリーノのジュストコールは、肩幅や袖が余る。ナーディアは、やや不安になった。
「不自然かな?」
「いや、いんじゃね? 夜で暗いし、少しくらい誤魔化せるだろうさ」
マリーノは、妙に機嫌良く頷いた。
「あ、帽子も忘れんなよ?」
「そうだった」
ナーディアは、髪を短く耳の下で切りそろえている。とはいえ、男性の髪型とも違うのだ。これまたマリーノから借りた帽子を目深にかぶって、ナーディアは中途半端な髪をどうにか隠した。
「じゃあ行くか」
寮を出る前、二人は団長のザウリの部屋を訪れて、外出許可を求めた。ザウリはあっさり承諾したものの、ナーディアを見てあっけにとられた顔をした。
「ところで、何だ、その格好は? 仮装舞踏会にでも出かける気か? それとも、ついにそういう趣味に走ったか」
「前者です!」
ナーディアは、間髪入れずに答えた。同時に、そういう趣味って何だ、と思う。
「二人とも、羽目を外しすぎて明日の調練に影響させるなよ?」
幸いにもザウリは、それ以上追及することはなかった。声をそろえて大丈夫ですと答えれば、ザウリは軽く頷いた。
「ま、お前らなら安心だが。責任感も強いし、真面目だ。……それに比べて」
ザウリは、忌々しげにため息をついた。
「あの新人には、困ったものだ」
「……ロレンツォがどうかしましたか?」
気になり、ナーディアは尋ねてみた。ザウリは、眉間にきつく皺を寄せた。
「昨夜いきなり申し出て、今日は調練だけ出席して、あとは休暇にしてくれと。入団したばかりの身で、何を考えているのかと思ってね。王宮近衛騎士団がどういう存在か、わかっているのかと言いたい」
持ち場が異なるので、ロレンツォが今日、休暇を取っていたとは知らなかった。確かに、直前の申し出となれば、ザウリが怒っても当然だ。どうしたのだろう、とナーディアは想像を巡らせた。調練後、ダリオと婚約披露パーティーに関する打ち合わせをしていたようだが。婚約に向けた動きの中で、何かトラブルでもあったのだろうか。
(コルラード兄様の件が解決したら、私も協力しよう……)
ナーディアは、そう心に決めたのだった。