最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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「お前が俺のこと、友達としか思ってないのは、よーくわかってるけど」





 呆然とするナーディアを、マリーノはじっと見つめた。





「考えてみてくれないか? 俺は気楽な三男だから、結婚相手は自由に選べる。だからナーディアは、結婚後も今まで通り、騎士を続けてくれて構わない。コルラード様がいらっしゃるから、そんなことにはならないだろうが、入れと言われりゃ婿に入ることだって……」





「ちょっ……、ちょっと待てよ!」





 とめどなく広がる話に、ナーディアは焦った。





「私が結婚できる立場じゃないのは、知ってるだろう?」



「王妃殿下とのお約束だろう?」





 マリーノは、静かに言った。





「でもそれは、ずっと続くわけじゃない。お前がオルランド殿下の護衛から外れたら、そんな縛りは無くなる」



「私が、外されるだと!?」





 王太子の護衛は、王宮近衛騎士団の中でトップの実力を持つ者が任されるというのが、暗黙の了解だ。トップの座を失うと言いたいのか、とナーディアは気色ばんだ。だがマリーノは、かぶりを振った。





「現状、お前が誰かに負けるとは思わない。それでも、ナーディアがオルランド殿下の護衛から外される可能性は、大いにある……。たとえば、殿下が妃を娶られた時のことを考えてみろ」





 マリーノは、言い聞かせるようにナーディアの顔をのぞき込んだ。





「妃となられた女性は、女性が夫の護衛を務めることを、どう思うだろうか。必ずしも認めるとは、限らないぞ?」





 目から鱗が落ちる思いだった。亡くなったオルランドの母だって、息子の護衛を女性が務めるということを、あれほど気にしていたではないか。まして妻となれば、当然だ……。





「オルランド殿下には、次々と縁談が舞い込んでこられていると伺っている。ナーディアは、いつ解任されてもおかしくないぞ? 俺は、その時まで……お前が結婚を許される身になるまで、待つつもりだ」
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