最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
2
マリーノの言葉は、ナーディアの頭の中に引っかかっていた。仮にオルランドの護衛でなくなったとしても、自分は王宮近衛騎士団の一員として、与えられた新しい職務に取り組むだけだ。それでも、いつか来るであろうその日に備えて、心の準備をしておきたかったのである。
「何だ。俺に愛想が尽きたか?」
オルランドが、冗談めかして言う。ナーディアは、慌てて否定した。
「とんでもありません。オルランド殿下には、今後とも誠心誠意、お仕えする所存です……。ですが、事情が変わることもございましょう? ……たとえば、殿下がお妃を迎えられた場合です。私という女性が護衛を務めることを、そのお方は快く思われないかもしれません」
「誰かに、そう言われたか?」
オルランドが、鋭い声音で尋ねる。ナーディアは、ドキリとした。
「……まあいい。言った奴は、大体見当が付く……。お前を妻に迎えたくて、たまらない男だろう」
オルランドは軽く微笑すると、思案顔になった。
「お前の質問に、真面目に答えるとするとだな。俺は、マリーノを選ぶだろう。そりゃ、実力順でいえばロレンツォなのだろうが。あいつは何だかなア……」
オルランドは、気が進まなさそうな顔をした。
「新米だから、ということですか?」
「……いや、そうではない。あいつは何というか、単なる騎士では終わらない気がするんだ。腹の中では、宰相でも目指しているのじゃないか。そんな野心を感じる」
宮廷舞踏会での一件のせいだろうか。それにしても、オルランドがロレンツォをそんな風に見ていたとは思わなかった。ナーディアは、あっけにとられていた。
「とはいえ、そんな日は来て欲しくないがな」
オルランドは、にこりと笑った。
「俺は、ナーディアを護衛として気に入っているんだ。お前は、ただ強いだけでなく、人を思いやれる心がある。その細やかな心配りを、俺は評価しているんだ。お前のような存在は、得がたいよ」
「何だ。俺に愛想が尽きたか?」
オルランドが、冗談めかして言う。ナーディアは、慌てて否定した。
「とんでもありません。オルランド殿下には、今後とも誠心誠意、お仕えする所存です……。ですが、事情が変わることもございましょう? ……たとえば、殿下がお妃を迎えられた場合です。私という女性が護衛を務めることを、そのお方は快く思われないかもしれません」
「誰かに、そう言われたか?」
オルランドが、鋭い声音で尋ねる。ナーディアは、ドキリとした。
「……まあいい。言った奴は、大体見当が付く……。お前を妻に迎えたくて、たまらない男だろう」
オルランドは軽く微笑すると、思案顔になった。
「お前の質問に、真面目に答えるとするとだな。俺は、マリーノを選ぶだろう。そりゃ、実力順でいえばロレンツォなのだろうが。あいつは何だかなア……」
オルランドは、気が進まなさそうな顔をした。
「新米だから、ということですか?」
「……いや、そうではない。あいつは何というか、単なる騎士では終わらない気がするんだ。腹の中では、宰相でも目指しているのじゃないか。そんな野心を感じる」
宮廷舞踏会での一件のせいだろうか。それにしても、オルランドがロレンツォをそんな風に見ていたとは思わなかった。ナーディアは、あっけにとられていた。
「とはいえ、そんな日は来て欲しくないがな」
オルランドは、にこりと笑った。
「俺は、ナーディアを護衛として気に入っているんだ。お前は、ただ強いだけでなく、人を思いやれる心がある。その細やかな心配りを、俺は評価しているんだ。お前のような存在は、得がたいよ」