最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

3

「そんな……。もったいないお言葉にございます」





 思いがけないオルランドの評価に、ナーディアは思わず顔を赤らめた。





「本心だ。というわけで、妃を迎えたところで、俺はお前を解任するつもりはない。第一、そんなくだらん嫉妬をするような女は、ラクサンド王国の王太子妃にはふさわしくない。俺が未来の王妃に求めるのは、寛大な心……。そして、豊満な胸だ」





 感激の眼差しでオルランドを見つめていたナーディアだったが、彼の最後のフレーズに、ガクッと頭を垂れた。





「……やはり、そこなんですね」



「最重要事項と言ったろう?」





 大きく頷くと、オルランドは何気ない調子で付け加えた。





「第一、豊かな果実が傍にあるのに、洗濯板をわざわざ求める必要が、どこにある?」



「ちょっ……、殿下、ひどいですよ! いくら何でも、洗濯板よりはマシです!」





 真面目に否定しなければいけないのが、情けない。だがそこで、ナーディアはふと気付いた。





(あれ。もしかして、殿下が巨乳好きをアピールされてたのって……?)





 ナーディアに、あらぬ疑いがかけられないためだろうか。ナーディアは、今さらながら気付いた。





「どうした?」





 オルランドが、怪訝そうにする。ナーディアは、ふっと微笑んだ。





「いえ。私は、お仕えする方に恵まれたなあ、と思っていたのです」



「今頃気付いたのか?」





 つられたように、オルランドも笑う。ナーディアは、深々と礼をした。





「話を聞いていただき、ありがとうございました。おかげさまでスッキリしましたので、失礼します」





 ドレスのことや、モンテッラ家内部のことまでは話せない。それに、オルランドに認めてもらったことで、ナーディアの心は大分晴れつつあった。





 丁重に挨拶して、執務室を出る。そこでナーディアは、目を見張った。長い廊下の向こうから、見知った女性がやって来たのだ。王宮には、いるはずがないというのに。





「ナーディア、押しかけてごめんなさい。あなたが寮へ帰るまで、待てなかったのよ」





 フローラは、蒼白な顔をしていた。





「橋の崩落事故のことは知っているわね? お父様が、急遽現場へ向かわれたのよ。何だか、ひどく怒っていらして。コルラード兄様を勘当する、と仰っていたわ」
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