最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

5

 一日半後。ナーディアは、モンテッラの領地に到着した。ナーディア自身もほぼ不眠不休だが、ほとんど休息も与えずに走らせ続けた馬も、また気の毒だ。





「ごめんな。ご褒美に、後で好物をたくさんやるからな」





 ナーディアは、幼い頃からの愛馬に声をかけながら、労るように撫でた。





(それにしても。コルラード兄様は、一体何をやらかしたのやら……)





 どうせ、事故対応に不備があったのだろうが。勘当などという台詞が飛び出すとは、尋常ではない。ナーディアは、首をひねった。





 問題の橋は、周辺地域に水を引きやすくするために、ロベルトが意気込んで建設に取り組んできたもので、完成したのはつい半年前だ。完成時はナーディアも見に行ったが、石造りの荘厳な橋で、圧巻の風景だった。あれが無残にも崩落したのかと思うと、無念でならない。まして、父の沈痛はどれほどだろう。





(コルラード兄様には、それほど思い入れはないでしょうけれど……)





 次期領主であるコルラードに勉強させようと、ロベルトはこの仕事を途中から彼に任せた。とはいえ、コルラードが引き継いだのは、今から一年前である。わずか半年しか関わっていない彼に、橋への愛着があるとは思えなかった。





(あれ……? 一年前、といえば)





 ナーディアは、ふと気が付いた。コルラードが、アガタという娼婦にはまり始めたのも、同時期ではなかったか。慣れない仕事でイライラが募り、ストレスを解消したかったのだろうが。





(偶然、だよな……?)





 何やら不吉な予感がするのを、ナーディアは抑えきれなかった。
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