最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

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「案の定、先日の大雨で、橋はあっけなく崩れ落ちました……。そして、ここへやって来られたコルラード様が、開口一番何と仰ったとお思いです!?」





 怒りが頂点に達したのか、親方は怒濤のようにまくし立てた。





「ご自分の指示を反省されるどころか、俺に怒鳴り散らしたんですよ。全部お前らの責任だ、さっさと修復しろと……。そして、こうも仰いました。この予算組み替えについては、父に喋るな、と。さもなければ、僕が領主になった後、お前らに仕事は依頼せんぞ、と。それは、居丈高な仰りようで……」





 兄のあまりの言動に、ナーディアは言葉を無くした。一人で対応すると強情を張ったのは、そのせいか。自分の失態を、父に知られないためだろう。





「俺たちにも、プライドってもんがありますんでね。そこまで言われて、はいはいと修復を請け負う気にはなれませんぜ」





 親方が、そっぽを向く。修復作業が全く進んでいないのはそのせいか、とナーディアは納得した。





「そして、気付いたわけです。この予算組み替えは、本当にロベルト様のご指示なのだろうか、と。問い合わせようとしていた矢先、こちらのロレンツォ様がいらっしゃいまして」





 親方は、ロレンツォをチラと見た。好意的な眼差しだった。





「フローラ様の、ご婚約者だそうですね。心配で、わざわざ様子を見に来られたのだとか。俺たちも、コルラード様への鬱憤が溜まっていましたから、ついいろいろと打ち明けてしまったんです」





 事故の後、ロレンツォはすぐに休暇を取ったが、早速ここへ駆け付けていたのか。ナーディアは驚いた。それも、今日まで留まっていたなんて。





「ロレンツォ様は、義兄の不手際の詫びだと仰って、俺たちをたいそう慰労してくださったんです。今回の事故で、俺たちへの信頼が損なわれないようにと、新しい工事の案件をご紹介くださいましたし、有名な採石職人との縁も取り持っていただきました。どちらも、ツテをお持ちだったのだとか」
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