最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
9
誤魔化せないと観念したのか、コルラードはふてくされたように答えた。
「ちょっとお借りしただけじゃないですか。どうせいずれは、僕の印になるんだし……」
「馬鹿者!!」
ロベルトは、コルラードの頬を、すさまじい勢いで打った。
「最終確認は私に取れと、あれほど命じたであろうが。第一、領主印を無断使用するなど、言語道断だ!」
ロベルトの顔は、怒りで真っ赤に染まっていた。
「ここまでして、予算を削るなど……。お前の目的は、一体何だ!」
「それは……、単なる、経費節減……」
コルラードは、ごにょごにょと呟いている。ナーディアは、そこでハッと気が付いた。コルラードが工事に関わるようになったのが、一年前だったことを。
「兄様。娼婦に貢いだのではないですか?」
ロレンツォや親方たちがいるのも構わず、ナーディアは兄に詰め寄っていた。コルラードが気色ばむ。
「お前、兄に向かって、何という失礼な……」
「アガタなら、身請けされましたよ」
「何だって!?」
コルラードは、とたんに真っ青になった。必死に、ナーディアに取りすがる。
「もう彼女に会えないというのかっ。一体、どいつが身請けを……」
「コルラード、ナーディア。どういうことだ?」
ロベルトが、苛立たしげに遮る。ナーディアは、父に向かって説明した。
「コルラード兄様が、娼館に通い詰めているという噂を聞いて、私は確かめに参ったのです。兄様は、『リマソーラ』という店の常連で、一年間、アガタという娼婦を贔屓なさっていたとわかりました」
傍で聞いていた親方が、呆れたようにため息をつく。彼は、仲間の石工らを連れて、さっさと立ち去って行った。
「一年間……、だと?」
ロベルトは、青ざめた表情で繰り返した。
「コルラード。まさかお前は、本当にナーディアの言う通り……」
「アガタだけだったんだ! 僕に優しくしてくれるのは」
開き直ったように、コルラードがわめく。
「父上は僕を怒鳴ってばかりだし、フローラもナーディアも僕を馬鹿にして……。アガタは、唯一僕を大切に扱ってくれたんだ。尊敬している、とも言ってくれた……」
娼婦の商売文句を、真に受けるなんて。兄が情けなさ過ぎて、ナーディアは涙が出そうになった。
「ちょっとお借りしただけじゃないですか。どうせいずれは、僕の印になるんだし……」
「馬鹿者!!」
ロベルトは、コルラードの頬を、すさまじい勢いで打った。
「最終確認は私に取れと、あれほど命じたであろうが。第一、領主印を無断使用するなど、言語道断だ!」
ロベルトの顔は、怒りで真っ赤に染まっていた。
「ここまでして、予算を削るなど……。お前の目的は、一体何だ!」
「それは……、単なる、経費節減……」
コルラードは、ごにょごにょと呟いている。ナーディアは、そこでハッと気が付いた。コルラードが工事に関わるようになったのが、一年前だったことを。
「兄様。娼婦に貢いだのではないですか?」
ロレンツォや親方たちがいるのも構わず、ナーディアは兄に詰め寄っていた。コルラードが気色ばむ。
「お前、兄に向かって、何という失礼な……」
「アガタなら、身請けされましたよ」
「何だって!?」
コルラードは、とたんに真っ青になった。必死に、ナーディアに取りすがる。
「もう彼女に会えないというのかっ。一体、どいつが身請けを……」
「コルラード、ナーディア。どういうことだ?」
ロベルトが、苛立たしげに遮る。ナーディアは、父に向かって説明した。
「コルラード兄様が、娼館に通い詰めているという噂を聞いて、私は確かめに参ったのです。兄様は、『リマソーラ』という店の常連で、一年間、アガタという娼婦を贔屓なさっていたとわかりました」
傍で聞いていた親方が、呆れたようにため息をつく。彼は、仲間の石工らを連れて、さっさと立ち去って行った。
「一年間……、だと?」
ロベルトは、青ざめた表情で繰り返した。
「コルラード。まさかお前は、本当にナーディアの言う通り……」
「アガタだけだったんだ! 僕に優しくしてくれるのは」
開き直ったように、コルラードがわめく。
「父上は僕を怒鳴ってばかりだし、フローラもナーディアも僕を馬鹿にして……。アガタは、唯一僕を大切に扱ってくれたんだ。尊敬している、とも言ってくれた……」
娼婦の商売文句を、真に受けるなんて。兄が情けなさ過ぎて、ナーディアは涙が出そうになった。