最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

10

「いつか、彼女を身請けしてあげようと思ったんだ。そのためには、金が必要で……」



「それで、予算をちょろまかしたのか!!」





 ロベルトがわめく。





「そのせいで、どれだけの被害が出たと思ってるんだ! 上に建っていた家は崩壊し、死者も大勢出た。お前がたわけたせいで、多数の領民が犠牲に……」





 ロベルトは、目頭を押さえた。ナーディアは、そっと父に寄り添っていた。武闘派として知られる父だが、内実は人情味にあふれ、領民思いである。どれほどの心痛だろう、と慮ったのだ。だが一方のコルラードは、相変わらずふてぶてしい態度だった。





「いいじゃないですか、少しくらい。いずれは、僕の物になる金なんだし……」



「お前の物にはならない」





 ロベルトは、きっぱりと言い放った。息子の目を見て、びしりと宣言する。





「コルラード。お前には、今日という今日で愛想が尽きた。お前は、勘当だ」



「父上!?」





 コルラードは、さすがに青ざめた。





「……まさか、本気で仰っているのではありませんよね?」



「本気だ」





 ロベルトは、重々しく答えた。





「実は、ここへ来る道すがら、ずっと考えていた……。お前の振る舞いは、予想以上のひどさだったが」



「で、でも……! 僕が家を出れば、モンテッラ家には男子がいなくなりますよ!?」





 ラクサンド王国では、女性の爵位継承は認められていないのである。コルラードがずっと強気だったのは、そのせいだ。だがロベルトは、少しも動じなかった。





「いなくなるなら、新しい男子を迎えればいい。幸い私には、娘もいるのでな」





 まさか、と言いたげに、コルラードがロレンツォを見やる。
< 65 / 200 >

この作品をシェア

pagetop