最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる

11

 ロベルトは、ロレンツォに向かって尋ねた。





「ロレンツォ殿。君には、フェリーニの家を離れるという選択肢はないかね。つまりは、フローラの婿に、ということだが……」



「そんなの、認められるか!」





 コルラードは食ってかかろうとしたが、そこへ再び、ロベルトの平手打ちが飛んだ。





「黙れ! お前にはもう、発言の資格はない」





 言い捨てると、ロベルトは再びロレンツォの方を向き直った。





「お見苦しい所を多々お見せし、本来私や長男がすべき対応もしていただいて、この上厚かましい願いなのはわかっている。しかもフェリーニ家は、由緒あるお家柄。このようなことは、言い出すのもおこがましいのだが……」





 ロレンツォは、じっとロベルトの話を聞いていたが、やがてにこりと笑った。





「俺でよろしければ、喜んで」



「本当か?」





 ロベルトが、顔を輝かせる。ナーディアは、意外に思った。つい最近まで伯爵の身分だったモンテッラ家は、フェリーニ家に比べればずっと格下だ。いくら次男で、爵位は継がないとはいえ、フェリーニ家を離れることに抵抗はないのだろうか……。





「ここだけの話ですが、実は俺は、それほどフェリーニの家に未練はありません。そもそも、迎え入れられたのだって、つい最近ですから」





 ロレンツォが、あっさり答える。ロベルトは、ほっとしたような表情を浮かべた。





「そうか……? そう言っていただけると、ありがたいが……」



「それに。フローラ嬢と一緒にいられるのなら、俺はどんな形態でも構わないのです」





 ロレンツォは、穏やかに微笑んだ。





「どうぞよろしくお願いいたします、ロベルト様。……そして、ナーディア」





 ロレンツォが、チラとナーディアの方を見る。こちらこそ、と答えながらも、ナーディアは胸にチクリと痛みが走るのを感じていた。脳裏には、マリーノの台詞が蘇っていた。





(――『恋をしてる』か……)
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