最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
第七章 二人きりの夜

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 それから約二ヶ月が経過した。





 あの後ロベルトは、本当にコルラードを家から追い出した。その際ロベルトは、コルラードがくすねた橋の建設予算の未使用分を取り返した。コルラードは、金の一部を『リマソーラ』への支払いにつぎ込んだものの、大部分は手つかずにしていたのだ。アガタを将来身請けする費用として、貯めていたのである。





 ロベルトは、取り戻したその金を、元々橋の上に住んでいた人々に提供し、家の再建費用に充てるよう手配した。さらにはロレンツォの助言通り、橋の通行料を今後一年間無料とする旨を、領民に通知した。こうして領民たちの不満や怒りは、大分収まった。なお、これらの施策を実際に現場で実行したのは、ロレンツォである。自ら決断したこととはいえ、息子を勘当せざるを得なかった心労で、ロベルトは体調が悪化し、寝込んでしまったのだ。





 そして、肝心の橋の修復工事も、順調に進んでいる。この点もまた、ロレンツォの貢献が大きかった。すっかり彼と打ち解けた石工たちは、機嫌良く作業に取り組んでいるらしい。さらには、親方からロベルト宛てに手紙が来た。遠回しではあるが、ロレンツォが次期領主となることを望んでいる様子だった。それならば、今後も付き合いを続けたいと考えているようである。





 親方のその願いは、叶う見込みである。公には発表していないものの、ロレンツォがフローラの婿となり、モンテッラの家を継ぐ話は、フェリーニ・モンテッラ両家の間で、すでに固まったのだ。生まれ育った家を離れずに済むということで、フローラに異存はなかったし、フェリーニ侯爵もまた、すんなり承諾したのである。





 これに関してナーディアは、やや違和感を覚えた。以前立ち聞きした会話からは、フェリーニ侯爵はロベルトに対して、何やらわだかまりがある様子だったからだ。そのロベルトの跡取りとして、息子ロレンツォを差し出すなど、意外な気がしたのだ。





(しょせんは外に作った子、愛情が薄いのだろうか……)





 聞いた話では、フェリーニ侯爵はロレンツォの母親のことを、たいそう愛していたようだったが。疑問は湧くものの、さすがにナーディアに、それを口に出す勇気はなかった。
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