最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
7
「やられた……」
ナーディアは、思わず呟いていた。仕立屋の弟子の一人が、服をここにしまうのを、ナーディアは確かに見た。その後で、いつの間にか隠したのだろう。着付けに神経が行っていて、全く気付かなかった。
ふと見れば、ワードローブ内には一枚のメモが落ちていた。見覚えのあるダリオの筆跡で、こう綴られている。
『ナーディアへ。ドレスはお気に召したかな? せっかくだから、僕が戻るまでその格好でいたまえ。そうそう、今宵この屋敷には、フェリーニの親族一同が集まるから。運が良ければ、彼らにドレス姿を披露できるね』
ナーディアは、思わずメモを投げつけて怒鳴っていた。
「ダリオの馬鹿野郎。私を、とことん見世物にする気か!」
王宮近衛騎士団の同僚らの前にさらすだけでは、足りないというのか。人間ができてる、という先ほどの台詞を撤回したい。やはり、ダリオは悪魔だ。
「ふん。残念ながら、ドレスはもう脱いだからな!」
ナーディアはシュミーズ姿のまま、ごろんとソファに寝転んだ。こうなったら、ダリオが帰宅するまで、開き直ってこのままで過ごそうか。もう一度ドレスを着せようとしたって、絶対言いなりになどならない。
(しっかし、憎らしい奴め……)
どうにか、意趣返しをしたいのだが。ふと見れば、室内のキャビネット内には、酒瓶が並んでいる。元々、茶会に使用されていた部屋だからだろう。どうやら、年代物らしい。
(高価そうだけど……。知ったことか)
ナーディアはソファから起き上がると、その中からブランデーを選び出した。グラスの類は見当たらないので、直接瓶に口をつける。体も温まるしちょうどいいや、とナーディアは思った。まだ暖炉を焚く季節ではないものの、シュミーズ姿だと、さすがに肌寒かったのだ。
いい気分で飲んでいると、誰かが廊下を歩いて来る気配がした。足音から察するに、男性のようだ。
(ダリオか?)
ナーディアは、扉の所へ駆け寄った。あらん限りの声でわめく。
「ダリオ! こんな所へ閉じ込めて、どういうつもりだ!? さっさと、ここから出せ!」
足音が、一瞬止まる。続いて返ってきた返事に、ナーディアはドキリとした。
「ナーディア? そこにいるのか?」
ロレンツォの声だった。
ナーディアは、思わず呟いていた。仕立屋の弟子の一人が、服をここにしまうのを、ナーディアは確かに見た。その後で、いつの間にか隠したのだろう。着付けに神経が行っていて、全く気付かなかった。
ふと見れば、ワードローブ内には一枚のメモが落ちていた。見覚えのあるダリオの筆跡で、こう綴られている。
『ナーディアへ。ドレスはお気に召したかな? せっかくだから、僕が戻るまでその格好でいたまえ。そうそう、今宵この屋敷には、フェリーニの親族一同が集まるから。運が良ければ、彼らにドレス姿を披露できるね』
ナーディアは、思わずメモを投げつけて怒鳴っていた。
「ダリオの馬鹿野郎。私を、とことん見世物にする気か!」
王宮近衛騎士団の同僚らの前にさらすだけでは、足りないというのか。人間ができてる、という先ほどの台詞を撤回したい。やはり、ダリオは悪魔だ。
「ふん。残念ながら、ドレスはもう脱いだからな!」
ナーディアはシュミーズ姿のまま、ごろんとソファに寝転んだ。こうなったら、ダリオが帰宅するまで、開き直ってこのままで過ごそうか。もう一度ドレスを着せようとしたって、絶対言いなりになどならない。
(しっかし、憎らしい奴め……)
どうにか、意趣返しをしたいのだが。ふと見れば、室内のキャビネット内には、酒瓶が並んでいる。元々、茶会に使用されていた部屋だからだろう。どうやら、年代物らしい。
(高価そうだけど……。知ったことか)
ナーディアはソファから起き上がると、その中からブランデーを選び出した。グラスの類は見当たらないので、直接瓶に口をつける。体も温まるしちょうどいいや、とナーディアは思った。まだ暖炉を焚く季節ではないものの、シュミーズ姿だと、さすがに肌寒かったのだ。
いい気分で飲んでいると、誰かが廊下を歩いて来る気配がした。足音から察するに、男性のようだ。
(ダリオか?)
ナーディアは、扉の所へ駆け寄った。あらん限りの声でわめく。
「ダリオ! こんな所へ閉じ込めて、どういうつもりだ!? さっさと、ここから出せ!」
足音が、一瞬止まる。続いて返ってきた返事に、ナーディアはドキリとした。
「ナーディア? そこにいるのか?」
ロレンツォの声だった。