最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
15
「私のか?」
やや怪訝に思ったものの、ナーディアは語り始めた。
「とにかく、体を動かすことが好きだったな。まだ剣を握らせてもらえない頃から、木の枝を振り回して、暴れていた。騎士に憧れていたんだ。夢は、お父様のようになることだった」
「ああ。昔から剣術が好きだったんだな?」
ロレンツォが、相づちを打つ。うん、とナーディアは大きく頷いた。
「弓や槍、体術も楽しかったけれど。でも、やっぱり一番は剣術だな。剣を振れる機会は、一回でも逃したくなかった。だから、その時ばかりはコルラード兄様が役に立ってくださったんだ」
「コルラード殿が?」
「そう」
ナーディアは、クスッと笑った。大分酔いが回ってきたのか、自分でも、不必要に饒舌になっているのがわかる。
「コルラード兄様は、武芸が大嫌いでな。せっかくお父様が稽古を付けてくださろうとしても、しょっちゅうさぼって逃げ出されたんだよ。だからその時間、私が代わりに、お父様に稽古を付けていただいたものだ。……そうそう、兄様に化けて、剣術の大会に出たこともあるんだぜ。あの時は、さすがにお父様に叱られたけど」
ロレンツォが、低く何かを呟いた。ナーディアの耳には、「そういうことか」と聞こえた。
「懐かしいなあ……。あの頃」
子供時代を思い出して、ナーディアは頬を緩めた。
「兄様がそんな具合だったから、代わりにダリオがうちの庭で、剣の手合わせをしてくれたものだ。……ま、私よりはずっと弱かったけど。フローラ姉様は、刺繍をしながらそれを見守っていてくれてな。で、そこへ、稽古をさぼったのが見つかった兄様が、お父様にとっつかまって引きずられて来る、と。それがお決まりのパターンだった」
「そうか」
ロレンツォが頷く。今度は、明瞭な声だった。
「俺も、そこに加わりたかったな」
ナーディアは、ハッとした。
やや怪訝に思ったものの、ナーディアは語り始めた。
「とにかく、体を動かすことが好きだったな。まだ剣を握らせてもらえない頃から、木の枝を振り回して、暴れていた。騎士に憧れていたんだ。夢は、お父様のようになることだった」
「ああ。昔から剣術が好きだったんだな?」
ロレンツォが、相づちを打つ。うん、とナーディアは大きく頷いた。
「弓や槍、体術も楽しかったけれど。でも、やっぱり一番は剣術だな。剣を振れる機会は、一回でも逃したくなかった。だから、その時ばかりはコルラード兄様が役に立ってくださったんだ」
「コルラード殿が?」
「そう」
ナーディアは、クスッと笑った。大分酔いが回ってきたのか、自分でも、不必要に饒舌になっているのがわかる。
「コルラード兄様は、武芸が大嫌いでな。せっかくお父様が稽古を付けてくださろうとしても、しょっちゅうさぼって逃げ出されたんだよ。だからその時間、私が代わりに、お父様に稽古を付けていただいたものだ。……そうそう、兄様に化けて、剣術の大会に出たこともあるんだぜ。あの時は、さすがにお父様に叱られたけど」
ロレンツォが、低く何かを呟いた。ナーディアの耳には、「そういうことか」と聞こえた。
「懐かしいなあ……。あの頃」
子供時代を思い出して、ナーディアは頬を緩めた。
「兄様がそんな具合だったから、代わりにダリオがうちの庭で、剣の手合わせをしてくれたものだ。……ま、私よりはずっと弱かったけど。フローラ姉様は、刺繍をしながらそれを見守っていてくれてな。で、そこへ、稽古をさぼったのが見つかった兄様が、お父様にとっつかまって引きずられて来る、と。それがお決まりのパターンだった」
「そうか」
ロレンツォが頷く。今度は、明瞭な声だった。
「俺も、そこに加わりたかったな」
ナーディアは、ハッとした。