最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
10
主役二人の挨拶が終わると、出席者らは我先にと、フェリーニ一族の元へ殺到した。
とはいえ、もっぱら挨拶責めに遭ったのは、ロレンツォではなく、フェリーニ侯爵とダリオだった。マクシミリアーノ・ディ・フェリーニは、宮廷で大きな発言権を持つ。その彼と、次期当主であるダリオに取り入りたい、あわよくば姻戚関係を結びたいのは見え見えだった。ダリオの元には、年頃の娘を連れた男性貴族が、次々と群がっている。
ナーディアは、所在なく会場内を見回した。オルランドの警護以外で、こういう催しに出席することは滅多にないから、どう振る舞っていいか途方に暮れる。まして今日は、ドレス姿だ。おまけに、慣れないヒールを履いた足は、すでに痛みを覚えていた。
きょろきょろしていると、ザウリの姿が見えた。この格好を見せるのは恥ずかしいが、挨拶はせねばならない。近付いて声をかけると、ザウリは案の定、目をまん丸に見開いた。
「――ナーディア!? おい、見違えたぞ」
ザウリは無遠慮に、ナーディアの頭のてっぺんから足元まで視線を往復させた。
「ははあ、今日休みを取りたいと言った時に、挙動不審だったのは、このせいか……。いや、いいじゃないか? ちゃんと女に見える」
「止めてくださいよ……。好きで、こんな格好してるわけじゃないんですから……」
消え入るような声で訴えれば、ザウリは妙に真剣にかぶりを振った。
「いやいや、そういう服装にも慣れなきゃいかん。今後のことを考えるとな」
「は? 今後って?」
ナーディアはきょとんとした。
「とぼけんでもいい。まあ、今後ともよろしくな」
「はあ……?」
ザウリが改まってそんなことを言う理由が、さっぱりわからない。取りあえず、よろしくお願いしますと返していると、見慣れた制服姿の男たちがやって来た。マリーノをはじめとする、王宮近衛騎士団の一行である。
「団長、そちらの女性は……、って、ええ!?」
彼らはナーディアを見て、のけぞった。
とはいえ、もっぱら挨拶責めに遭ったのは、ロレンツォではなく、フェリーニ侯爵とダリオだった。マクシミリアーノ・ディ・フェリーニは、宮廷で大きな発言権を持つ。その彼と、次期当主であるダリオに取り入りたい、あわよくば姻戚関係を結びたいのは見え見えだった。ダリオの元には、年頃の娘を連れた男性貴族が、次々と群がっている。
ナーディアは、所在なく会場内を見回した。オルランドの警護以外で、こういう催しに出席することは滅多にないから、どう振る舞っていいか途方に暮れる。まして今日は、ドレス姿だ。おまけに、慣れないヒールを履いた足は、すでに痛みを覚えていた。
きょろきょろしていると、ザウリの姿が見えた。この格好を見せるのは恥ずかしいが、挨拶はせねばならない。近付いて声をかけると、ザウリは案の定、目をまん丸に見開いた。
「――ナーディア!? おい、見違えたぞ」
ザウリは無遠慮に、ナーディアの頭のてっぺんから足元まで視線を往復させた。
「ははあ、今日休みを取りたいと言った時に、挙動不審だったのは、このせいか……。いや、いいじゃないか? ちゃんと女に見える」
「止めてくださいよ……。好きで、こんな格好してるわけじゃないんですから……」
消え入るような声で訴えれば、ザウリは妙に真剣にかぶりを振った。
「いやいや、そういう服装にも慣れなきゃいかん。今後のことを考えるとな」
「は? 今後って?」
ナーディアはきょとんとした。
「とぼけんでもいい。まあ、今後ともよろしくな」
「はあ……?」
ザウリが改まってそんなことを言う理由が、さっぱりわからない。取りあえず、よろしくお願いしますと返していると、見慣れた制服姿の男たちがやって来た。マリーノをはじめとする、王宮近衛騎士団の一行である。
「団長、そちらの女性は……、って、ええ!?」
彼らはナーディアを見て、のけぞった。