最強女騎士は、姉の婚約者に蕩かされる
17
「何……だって?」
再び、思考が停止する。ダリオのグレーの瞳は真剣で、ふざけている気配はない。
「嘘だろ。だってダリオ、今まで一言も、そんなことを言わなかったじゃないか」
マリーノから聞かされなければ、今もまだ知らなかったことだろう。するとダリオは、さらに意外な言葉を続けた。
「口にはしなかったが、妻にするなら君しかいないと思っていた。君が十八になったら、申し込むつもりだった」
愕然とした。ダリオは、仲の良い幼なじみではなかったのか。いつも屋敷へ来ては、手合わせに付き合ってくれて……。
「でも。その年、君はオルランド殿下の護衛に決まってしまっただろう」
ダリオが、不満そうに顔を歪める。
「結婚はしない、などと王妃殿下と勝手に約束をして……。申し込めなくなってしまったじゃないか」
衝撃で吹っ飛んでいた怒りが、再びふつふつと湧き上がってくる。何が『勝手に』だ。それは、こちらの台詞だと言いたかった。
「王妃殿下が亡くなった後、申し込むことは考えた。でも、亡くなった直後にというのも、どうかと思ってね。それにロベルト様の性格からして、フローラより先に君を嫁がせることは、しないのじゃないかと思ったんだ」
ダリオは、淡々と語っている。
「だから、このタイミングを選んだ。フローラも婚約したことだし、もうそろそろいいだろうと……」
「百歩譲って、なぜ今かというのはわかった」
ナーディアは、ダリオの言葉を遮った。
「でも、なぜ私や父に直接言わない?」
「言ったら君は、『王妃様とのお約束だから』の一言で却下するだろうが!」
ダリオが珍しく、声を荒らげる。
「だからこうして、外から固めるしかなかった。君は、勝負と言えば血が騒ぐ性質だからな。コルラードが勘当されて計画が狂いそうになり、焦ったけれど、首尾良くドレスを着せられてよかったよ。本当は、もっと早めに皆に披露するはずだったんだが……。ほら、ドレスの最終確認の日だよ。エルネスト伯父上がお倒れにならなければ、あの日君を、親族一同に紹介する予定だった」
再び、思考が停止する。ダリオのグレーの瞳は真剣で、ふざけている気配はない。
「嘘だろ。だってダリオ、今まで一言も、そんなことを言わなかったじゃないか」
マリーノから聞かされなければ、今もまだ知らなかったことだろう。するとダリオは、さらに意外な言葉を続けた。
「口にはしなかったが、妻にするなら君しかいないと思っていた。君が十八になったら、申し込むつもりだった」
愕然とした。ダリオは、仲の良い幼なじみではなかったのか。いつも屋敷へ来ては、手合わせに付き合ってくれて……。
「でも。その年、君はオルランド殿下の護衛に決まってしまっただろう」
ダリオが、不満そうに顔を歪める。
「結婚はしない、などと王妃殿下と勝手に約束をして……。申し込めなくなってしまったじゃないか」
衝撃で吹っ飛んでいた怒りが、再びふつふつと湧き上がってくる。何が『勝手に』だ。それは、こちらの台詞だと言いたかった。
「王妃殿下が亡くなった後、申し込むことは考えた。でも、亡くなった直後にというのも、どうかと思ってね。それにロベルト様の性格からして、フローラより先に君を嫁がせることは、しないのじゃないかと思ったんだ」
ダリオは、淡々と語っている。
「だから、このタイミングを選んだ。フローラも婚約したことだし、もうそろそろいいだろうと……」
「百歩譲って、なぜ今かというのはわかった」
ナーディアは、ダリオの言葉を遮った。
「でも、なぜ私や父に直接言わない?」
「言ったら君は、『王妃様とのお約束だから』の一言で却下するだろうが!」
ダリオが珍しく、声を荒らげる。
「だからこうして、外から固めるしかなかった。君は、勝負と言えば血が騒ぐ性質だからな。コルラードが勘当されて計画が狂いそうになり、焦ったけれど、首尾良くドレスを着せられてよかったよ。本当は、もっと早めに皆に披露するはずだったんだが……。ほら、ドレスの最終確認の日だよ。エルネスト伯父上がお倒れにならなければ、あの日君を、親族一同に紹介する予定だった」