落ちぶれ令嬢として嫁いだら、 黒騎士様の溺愛が待っていました
隣にいるのがおそろしい相手だと改めて気づかされるようで、プラチナの体はますます強ばる。
すると、王子の視線はヴァルテールからプラチナに移った。
「それで、貴公の隣にいる女性は何者だ? それと、肩に乗っている小動物は?」
「ミトロジアの〝竜使い〟――シェーヌ家の直系の娘、プラチナ・シェーヌだそうです」
ヴァルテールは無感動に応え、肩にいるのは付属品の竜です、と付け加える。
王子が、小さく目を見開く。
「ミトロジアのシェーヌ家は聞いたことがあるな。そこから〝ミトロジアの竜姫〟が出たのではなかったか? 確かマルヴァという名だった気がするが……」
「――シェーヌは前代当主が亡くなり、弟が家督を継いで現在の当主となっているそうです。今代の竜姫は、前当主の姪にあたる女性であると。そちらがマルヴァという名で、ミトロジアの王子妃となることが決まっています」
そのやりとりにプラチナは視線を落とし、不自由な両手を組み合わせてぎゅっと力をこめた。
――〝ミトロジアの竜姫〟。ミトロジアの中でも、とりわけ才ある竜使いに冠せられる美称。それと共にマルヴァの名が上げられるたび、プラチナはいまだ心に細波が立つときがあった。いまこのときのように。
今度は文官の男が説明を代わる。
「ミトロジア側は、臣従の証、および一部の浅慮な者が我々に牙を剥こうとしたことへの償いとして、資産とこのシェーヌの血を差し出しました」
「ほう。竜使いの血統を差し出すか……面白い。そのマルヴァの方を差し出すことはしなかったのか?」
「強い抵抗を受けました。――代わりに、従姉妹であるこちらの娘をと」
淡々と交わされる言葉が、プラチナの心をまた波打たせた。
(……マルヴァの、代わり)
マルヴァはミトロジアの心臓、ゆえに差し出すことはできないとミトロジアの王が告げていたことをまざまざと思い出す。――だから、自分は従姉妹の代用品として売られた。
その事実が今になって、重くプラチナに響いて浸透した。
「いや、貴公らは期待以上の働きをしてくれたな。陛下もお喜びになるだろう」
王子はそう告げると、プラチナの全身を一瞥した。冷徹に品定めをするような眼差しを向け、ふむ、と思案げな声をもらす。
組んだ手に力をこめ、プラチナは逃げ出しそうになる自分を奮い立たせた。
――ここで自分がどうなるのか、まったく予想もできない。あるいは、ここで殺されるのかもしれないとさえ思った。それでも、逃げる場所はもうどこにもなかった。
すると、王子の視線はヴァルテールからプラチナに移った。
「それで、貴公の隣にいる女性は何者だ? それと、肩に乗っている小動物は?」
「ミトロジアの〝竜使い〟――シェーヌ家の直系の娘、プラチナ・シェーヌだそうです」
ヴァルテールは無感動に応え、肩にいるのは付属品の竜です、と付け加える。
王子が、小さく目を見開く。
「ミトロジアのシェーヌ家は聞いたことがあるな。そこから〝ミトロジアの竜姫〟が出たのではなかったか? 確かマルヴァという名だった気がするが……」
「――シェーヌは前代当主が亡くなり、弟が家督を継いで現在の当主となっているそうです。今代の竜姫は、前当主の姪にあたる女性であると。そちらがマルヴァという名で、ミトロジアの王子妃となることが決まっています」
そのやりとりにプラチナは視線を落とし、不自由な両手を組み合わせてぎゅっと力をこめた。
――〝ミトロジアの竜姫〟。ミトロジアの中でも、とりわけ才ある竜使いに冠せられる美称。それと共にマルヴァの名が上げられるたび、プラチナはいまだ心に細波が立つときがあった。いまこのときのように。
今度は文官の男が説明を代わる。
「ミトロジア側は、臣従の証、および一部の浅慮な者が我々に牙を剥こうとしたことへの償いとして、資産とこのシェーヌの血を差し出しました」
「ほう。竜使いの血統を差し出すか……面白い。そのマルヴァの方を差し出すことはしなかったのか?」
「強い抵抗を受けました。――代わりに、従姉妹であるこちらの娘をと」
淡々と交わされる言葉が、プラチナの心をまた波打たせた。
(……マルヴァの、代わり)
マルヴァはミトロジアの心臓、ゆえに差し出すことはできないとミトロジアの王が告げていたことをまざまざと思い出す。――だから、自分は従姉妹の代用品として売られた。
その事実が今になって、重くプラチナに響いて浸透した。
「いや、貴公らは期待以上の働きをしてくれたな。陛下もお喜びになるだろう」
王子はそう告げると、プラチナの全身を一瞥した。冷徹に品定めをするような眼差しを向け、ふむ、と思案げな声をもらす。
組んだ手に力をこめ、プラチナは逃げ出しそうになる自分を奮い立たせた。
――ここで自分がどうなるのか、まったく予想もできない。あるいは、ここで殺されるのかもしれないとさえ思った。それでも、逃げる場所はもうどこにもなかった。