真夜中の果て  ー文芸部コンビの事件帳ー

私はあの日のことを思い出してみる。

そういえば。

店の窓から。

市川さんを見かけたんだった。



「確か、車に乗って去って行った……?」

「そう、それ。その車ってさ、誰の車だと思う?」



矢戸田さんの口ぶりから、私は何となく橋谷先生のような気がした。

ふたりは、放課後に会っていたのかもしれない。



でもそれを矢戸田さん達に言っていいのかわからず、黙っていた。

すると、矢戸田さんは意外にも、こう言った。



「芸能プロダクションの、マネージャーの車だって!!」



「……えっ!?」



意外な展開に、私の目はきっと点になっている。



「市川さん、芸能界に復帰するらしいよぉっ!」



矢戸田さんは嬉しそうだった。



「あれ?矢戸田は市川 櫻子のファンなの?」
と、立川さん。



「いやいやいや、知り合いの中から芸能人が!って思うと、嬉しいじゃん」



少し顔を赤らめて、矢戸田さんは言い訳のように言う。

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