真夜中の果て ー文芸部コンビの事件帳ー
「市川さんは、もともと芸能界で子役として活動していた。……その時のように活動を再開したくて、芸能プロダクションの人と会っていたんですよね?」
「……」
「だけど、活動を再開するには問題があった」
息吹ちゃんの言葉に、市川さんは顔を上げる。
構わず続ける息吹ちゃん。
「不倫関係にある橋谷先生のことが世間にバレたら、あなたは芸能界に復帰することが難しくなる。……もしかしたら出来なくなるかも」
「うるさい」
「それだけは絶対に避けたいと考えたあなたは、橋谷先生に協力を求めた。橋谷先生だって、生徒との不適切な関係がバレたら、きっと仕事を失う。罰を受けることになる。多分……、市川さん以上に」
「黙って」
市川さんが苛立っているけれど、息吹ちゃんは続けた。
「だから先生は協力を引き受けた。世間にバラそうとする竹中先輩をふたりで殺した」
「やめろって!黙れって、言ってんじゃん!!」
「でも、あなたにとっては橋谷先生も邪魔だった。だって、竹中先輩が話せなくなったとしても、今度は橋谷先生が脅してくる可能性だってあるんだから」
「……違うっ」