悩める転生令嬢は、一途な婚約者にもう一度恋をする ~王族男子は、初恋の人を逃がさない~

公爵家の娘で、王族の婚約者

「アイナ、アイナ」
「……」
「アイナー……。聞こえてないね?」
「……」

 私は気が付いてなかったけれど、そんなやりとりがあったそうだ。

「ひゃうっ!?」

 夢中になって本を読んでいた私の肩に、ぽん、となにかが触れる。
 驚いて振り返ると、困り顔のジークベルトが立っていた。

「アイナ、ちょっと聞いて欲しいんだけど」
「ひゃい……」

 本日は晴天。
 ……にも関わらず、私は今日もシュナイフォード家の書庫にこもっていた。
 
 ジークベルトもいつでもおいでと言ってくれるし、婚約者2人の仲がいいのはよいことだからと両家にも許可されている。
 だから問題はないはずだけど、思春期の男女2人が黙々と本を読む会ばかり開催されているのは、なにかが違うのでは……って気もしている。


「……お茶会?」
「そう。お茶会。年の近い人を集めて、うちで開くんだ。君も来てくれると嬉しいのだけど」

 落ち着いた私の正面に座り、ジークベルトが話し出す。
 お茶会、舞踏会、お祝いのパーティー……。
 そういった催しは、私のような身分の人とって特に珍しいものでもない。
 私も10歳までは普通に出席していたし、そういった集まりで出会った子と友達になったりもした。

 でも、ただの女子高生だった記憶が戻ってからは、進んで参加する気にはなれなくなっていた。
 庶民として暮らした記憶もある人が上流階級の集まりに参加するって、なかなかハードルが高い。
 全く出席していなかったわけじゃないけれど、参加する回数は確実に減っていた。
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